第15話 テスト勉強と予定決め

 なんやかんやあって理奈と付き合うことが出来て、一週間が経った。

 それまでにイチャイチャとかはあまりしていない。

 理由は簡単で、狂歌に刺されて入院していた分、授業に置いて行かれるわけで。

 それを取り戻すために、補習を大量に受けていたためである。

 二月末には学年末テストもあるため本当にイチャイチャしている暇がなかったのである。


「アキ、補習はどんな感じなの?」


「良い感じ……かな。まあ、何とか今やってる授業には追い付けた感じかな」


「そっか。テストの方は大丈夫なの?」


「まあまあかな。赤点は無いとは思うけど、もう少し勉強しときたいな」


 放課後の学校の図書室で俺たち二人は勉強に勤しんでいた。

 恋人同士になってから全くと言っていいほど、それらしいことは出来ていないから本当に申し訳ない。

 テストが終わったらたくさん遊び行きたい。


「じゃあ、私も付き合うよ。一人で帰るのもアレだし。アキともっと長く一緒に居たいからね」


「ありがとう。俺も理奈と一緒に居たいから嬉しい」


 こんな風にちょっとイチャついてはいるけど、本格的なデートとかは全くしていない。

 したいのだが、今まで俺は補習で学校に缶詰だったし。

 これからはテスト週間で勉強の方が忙しくなってしまう。


「ふふ~じゃあ、ちゃんと勉強していい点とって晴れ晴れとした気分で遊びに行こうね!」


「ああ。その時は何か奢らせてくれ」


「楽しみにしとくね!」


 理奈はパァっと綺麗な笑みを浮かべてそう言ってくれた。

 関係が幼馴染から恋人に変わっても俺たちの間に流れる空気感はそこまで変わることは無かった。

 心地いい今までの距離感。

 でも、少しスキンシップが増えた。

 それだけの些細な変化。


「俺、今かなり幸せだよ」


「そう? ならよかった。私も幸せだよアキ」


 こんな風に歯が浮くような甘い言葉を言い合ったりするようにはなった。

 でも、それ以外は本当に変わらない。

 仲の良い女の子。

 俺にとって何よりも大切で愛しい人。


「ここまで終わらせたら今日は帰ろうか」


「わかった! 10ページくらいだね。一緒に頑張ろう!」


 こうして俺たちは静かな図書室で真面目に勉学に励んだ。

 勿論宿題などは既に終わっていて、ここからは完全に応用問題を解いていくだけだ。

 これが完璧にできるようになれば今回のテストで赤点を取ることは確実に無いだろう。


 ◇


「いやぁ~流石に二時間も続けて勉強すると疲れるね」


「だな、でもあれだけやれば赤点はなさそうで安心だよ」


「アキ何言ってるの? あそこまでできれば普通に80点は固いよ。うまくいけば90点も狙えるくらい」


「そうなのか?」


「うん。アキはちょっと自己評価が低すぎだね。自意識過剰よりは全然良いんだけどさ」


 そうか……80点は取れるのか。

 なんか、そう考えると少し安心できるけど慢心せずにしっかり勉強はしておこう。

 当日になって点数が悪ければ意味が無いからな。


「それでも、できる限りのことはするよ。悪い点は取りたくないし」


「アキならそう言うと思ったけど。アキは結構努力家だよね」


「そんなことない。成績の良い理奈に置いて行かれないように必死なだけだ」


 理奈はこう見えてかなり成績がいい。

 というか、この前聞いたら前回のテストは全部90点台にいってたと聞いた。

 俺も前の学校ではそこそこ勉強はしてたけど、流石にここまでじゃない。

 付き合った以上、同じ大学に行きたいからもっと勉強を頑張らないと。


「そんなこと気にしなくてもいいのに」


「気にするさ。理奈とは大学も同じが良いからさ」


 言いながら繋いでる手をより強く握る。

 理奈の手は俺の手よりも小さくて、柔らかくてスベスベだった。

 あまり強く握ると折れてしまいそうで不安になる。


「私もアキと一緒がいい。一緒に頑張ろうね!」


「もちろん」


 理奈が顔を覗き込んでくる。

 理奈と同じキャンパスライフを送るためならどんなに辛い勉強でも頑張れる気がする。

 まあ、キャンパスライフを夢見る前に俺は次の学年末テストを乗り切らないといけないわけなのだけど。


「話は変わるけどさ、もうそろそろバレンタインじゃん? ちょうど土曜日だから一緒にどこか遊びに行かない?」


 次の土曜日……テスト前の土曜日ってことか。

 その次の週の月曜日から五日間がテストだから、今のうちにある程度テスト範囲の勉強を終わらせておけば土曜日くらいは遊びに行けるか。

 俺も、理奈と遊びに行きたいし。


「もちろん! どこ行く?」


「う~ん、それは今から二人でアキの家で考えるって言うのはどう?」


「わかった。どうせなら夕飯も家で食べてけよ。母さんも喜ぶから」


「じゃあ、お言葉に甘えるね」


 理奈はスマホを取り出して誰かにメッセージを送っている。

 きっと、両親に夕飯を家で食べていくと連絡したのだろう。

 俺も一応母さんに許可を取っておく。

 断わることは無いだろうけど、一応だ。


「そんじゃあ、目的地は俺の家ってことで」


「うん! 早く行こ!」


 二月もそろそろ中旬。

 だけど、まだまだ俺たちに吹きかかってくる風は冷たい。

 暖を取るようにして俺たちはより一層くっついて繋ぐ手の力を仄かに強めた。

 普段と何も変わらないはずの通学路。

 だというのに、理奈が隣にいるだけでこの何もない道のりも楽しく過ごすことができる。


 ◇


「ただいま~」


「お邪魔します」


 家に帰ると母さんが満面の笑みで俺達を出迎えてくれた。

 母さんは俺と理奈が付き合い始めたのを知っており、こうして理奈を連れてくると凄く機嫌がよくなるのだ。


「おかえり秋ト。いらっしゃい理奈ちゃん。ゆっくりしていってね~」


「はい! ありがとうございます冬華さん」


 母さんと理奈が仲よさそうに二人で話していた。

 相変わらず母さんは理奈のことが大好きだよなぁ~

 まあ、俺の方が理奈のこと好きだけど。


「アキ? 変な顔してどうしたの?」


「そんな顔してたか?」


 言われて顔を触ってみると確かにしかめっ面になっている気がする。

 まあ、少しだけ母さんに嫉妬してたわけだが。


「まあ、ゆっくりしていって頂戴ね」


 母さんはにっこり笑ってそう言うとキッチンに戻っていった。


「じゃあ、俺たちも炬燵にでも入ってどこに行くか決めるか」


「うん! なんだか土曜日がものすごく楽しみになってきた!」


「俺もだ」


 俺たちは炬燵に移動して二人でどこに行くのかを話し合った。

 実際に土曜日も楽しみだけど、こうやって理奈と二人でどこに行くのかを話ってるだけでもすごく楽しかった。

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