第45話

 まあ、そんな感じでサイパルでプラネタリウムを観賞したのだが、明日には札幌へ戻る事になった。

 その理由は、再び警察から電話があったからである。


「もしもしどちら様でしょうか?」

 主は番号を確認して前回の刑事からの番号と同じだと分かっていての塩対応である。 ちなみに今度は最初から録音をしている。


「東署の五本木と申します。高坂さんで間違いないですか?」

 おっさん刑事がちゃんとさん付けで尋ねているよ……人間は何歳になろうが成長出来る、正に志あるところ道あり。我ちょっと感動……嘘だけど。


「はい高坂で間違いありません。ところでどちらで社会人としての最低限な電話のかけ方を習ったんですか?」

 塩対応じゃない。完全に戦闘モードになっている。

「ああ……前は失礼な態度で、も、申し訳ありませんでした」

 おっさん、主の開始早々の大振りのパンチを鼻っ面に食らって、明らかにビビって、挑発に対しても怒りを飲み込んで謝ったよ。


「それで、話をしておきたい事と、聞いておきたい事があるから、出来るだけ早くに一度東署に来てもらえないかい? 本来ならこっちから行くべきなのだろうが、そっちは女子大生向けの部屋だろ? 俺みたいのが行ったら迷惑だろ?」

 何て事でしょう? 薄汚れたおっさんが細かい配慮が出来る紳士的なおっさんになっています。


「分かりました。明日の午前十時でよろしいですか?」

 戦闘モードは解いたが、未だ塩対応である。

「それで頼む。署の入り口の立番の警官に話は通しておくから、五本木に会いに来たと言ってくれ……下さい」

 凄く悔しそうだが、本来は普段から謙虚に相手に対して敬意を持って対応していればこんなことにならなかったんだ。警察官が偉いって訳じゃないんだから。



『という訳で、明日の十時に警察署まで行く事になったんだけど……』

『明日も大雪みたいですから、宿を出て旭川駅行きのバスに乗ます。そして旭川駅のバス停で降りて、旭川駅の道北バス三番乗場で鷹栖行きの適当なバスに乗り。春光台を越えて鷹栖に入ったら、人目の無さそうな場所で降りて【飛行】スキルで札幌に向かいます。その後で生振(おやふる)の何処かで車に乗り換える予定です』

『生振って何処?』

 ごもっともな疑問だ。場所は石狩だが札幌市民で茨戸霊園がある場所と認識出来たら上等なレベルで、我もお盆の時期に石狩河口橋を渡る辺りで渋滞となっている状況で、橋の手前の右手から車列がどんどん入って来て渋滞を更に悪化させるので、あんな何も無さそうな場所から何でこんなに車が来るの? と疑問に思って調べるまでは、生振の存在自体知る事はなかっただろう。


『テレビのCMで茨戸霊園~♪って聞いた事がありますか?』

『聞いた事があるけど、特に気にした事はないよ』

『その茨戸霊園がある場所ですよ』

『へぇ~』

 全く興味なさそうだ。



『ねえ、ももちゃん。明日警察署でどんな話になると思う?』

 ちょっと不安そうな声色だ。主は不安があるからこそおっさんに対して攻撃的に出たのだろう。

『特に問題は無いと思いますよ』

 実際問題はほぼ片づけたはずだから。

『でも何を聞かれると分からないと緊張するよ』

『聞かれるより、向こうが主に伝える事の方が多くなるはずです』

『どうして?』

『我儘三人娘の親達の悪事を暴露してやりましたので、警察の態度も変わったはずです』

『……それって警察も』

『はい、警察にも協力者が居たようです……ちなみに先ほどの口が悪く、礼儀もなってないおっさんは、それ以外はまともな警察官でした』

『……えっ?』

 顔色が悪くなる。

『私、かなり失礼な態度だったよね?』

『相手も社会人として公僕としてかなり問題のある態度で、あの野郎、ぶっ殺してやろうかと、我は思っていたので気にしなくて大丈夫ですよ』

 そう告げながら、テーブルの上でシャドウボクシングを始める。

『そうなんだ……って、それ可愛いけど殺したら駄目だからね!』

『無益な殺生はしません』

『それって有益だったら殺生するって事だよね』

『我も殺しが大好き! という訳でもありませんが、必要なら必要なだけ殺しますよ……自分が後悔しない為に』

『後悔って?』

『主の生命と財産。そして我が貴女のペットである立場を失う。この三つの事です』

 これが偽りない我の本音だ。

『モモちゃん…………私の事好き過ぎ。そんな事言われると困っちゃうなぁ~もぉ~』

『そうです主よ。貴女のペットは貴女の事が大好きですよ』

『モモちゃ~ん!!』

 主は我を両手で捕まえてモフモフからのクンカクンカをして、最後にモモンガブーメラン(良く飼いならされたモモンガは、飼主に斜め上に投げられると、滑空して戻って来る)を五回繰り返してやっと冷静さを取り戻した。




 六時半前に宿を出て旭川行きのバスに乗り、旭川駅前のバス停から一番早いバスに乗り、二十分程でバスを降りる。

『凄い雪だね』

 ほぼ遮る物が無いので地吹雪が舞い上がり、こっそり【飛行】を使って飛び立つには理想的な状況だった。

『それでは札幌に帰りましょう』

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