第38話

注意:この物語はフィクションです。作中の人物及び団体は架空の存在であり、実在する如何なる人物・団体とは関係ありません。

↑ そろそろ、これを書いておかないとヤバい様な気がしてきました


 刑事コンビのポケット等に仕込んだ魔石は以前使ったものよりも大きいので札幌市全体をも超える範囲で二人の居場所を正確に教えてくれるので居場所は直ぐに分かる。

『東警察署か』

 潜入するには色々と面倒な場所だが、我は身体の大きさを変更出来る。

 さもなければ、魔族側の種族の中でも最も身体が大きい部類に入る種族である龍種や巨人族に合わせて魔王城などの施設を作れば、無駄に巨大な建造物を築く事になってしまうし、逆にスライムやコボルト、ダークフェアリーなどの小柄な種族にとっても広すぎて移動が面倒だろうし、扉一つを開ける事にも大変な事になるだろう。

 まあ歴代の魔王の中には我と同じく龍種筆頭の魔龍や、それ以外の龍種出身の魔王も多く、歴代魔王の半数を占めている。更に巨人族出身を合わせると六割を超えるので、巨大種族の魔王用の魔王城等の施設も存在するが、流石に巨大種族以外出身の魔王の場合は、龍種や巨人族も、自分達の身体を小さくして登城する事になる為、身体を小さくするスキル【縮小】は巨大種族にとっては必須であり習得も簡単である。

 逆にダークフェアリーなどは逆に身体を大きくするスキル【拡大】の習得が簡単らしい。

 これはスキル発現のトリガーが、大きい事、そして小さい事で感じるストレスの大きさに比例すると言われている……本当かいな?

 しかし、その理屈が正しいとするならば、身体が小さい事で小学生高学年にも間違われる事も多々あり不便を被っている主は、レベル一桁で習得する可能性がある……かも知れないね。

 ちなみに前世での我のレベルは500を超えている。故にスキル【拡大】をも使える。

 まあ、使ったところで強くなる訳でもない。あえて言えば体重が大きくなった分増えるだけで使い道はごく限られている……質量保存の法則とはいったい?


 そんな訳で現在、我は【縮小】で自分の身体を長さで十分の一。表面積で百分の一。体積で千分の一に縮小して、若い刑事のスーツの腰のポケットの中に押し込まれたフラップの裏に隠れている。

 凄く不快だ。若い方の刑事なら、まだ二十代だと思っていたので加齢臭はないだろうと思っていたが、こやつは既に加齢臭を漂わせている。不規則不摂生な生活が影響していると思われるが、それだけではなく一体こいつは何時スーツをクリーニングに出したんだ? ……いや知りたい訳ではない。それを知ったなら我の我慢が「もう、やってられるかこんな事!」とストライキを決行するだろう。


 二人の会話に聞き耳を立てていると、面白そうな話になっていた。

「もう一度、奴等の当日の朝の動きを確認したい」

 おっさんの方がそう切り出す。

「えっ、今更何も出ませんよ」

「お前はおかしいとは思わないのか?」

「何がですか?」

「連中の供述だ。あの小娘が契約している駐車場が分からなかったから、連中の内五人が小娘のマンションの前で待ち伏せをして、出てきた小娘の後を四人で尾行した……だよな?」

「そうですね。それが何か?」

「馬鹿野郎。連中はトールワゴンを運転していた奴や、連絡を取り合っていた形跡が無かった。それだけじゃねえ。連中はハイエースの連中とも連絡を取っていた形跡がない。これがおかしくないと思うほどボケてるとでも言うのか? 子田沢よ」


 そんな風に十分程臭いを我慢して聞き耳を立てていると、都合良く二人が別行動になる。

「五本木さん。すいません出かける前にちょっとトイレに行ってきます」

「おう、さっさと済ませて来いよ」


 若い刑事はそのまま個室に入る……おいおい、加齢臭だけじゃなく糞便の臭いまで嗅がされるのか? 勘弁してくれよ。

 そう思っていたら、便器に腰を掛けてスマホに番号を入力し始める。

 態々、上司に嘘を吐いてトイレに来て、密かに連絡を取る……何やら始まる予感ワクワクする。

『課長。五本木のおっさんがまだ例の事件に拘っていて、もう一度現場に行くとか言い出して……はい、しかし連中の間の通話記録が残ってないのがおかしいと、そう言われたら正論だけに頷くしか出来ませんって……』

 やはり一番怪しかった子田沢、そして課長……多分東警察署の刑事課の課長だろう。万が一にも道警本部の刑事課長だったら、警察側の協力者のトップは本部長やその周辺の立場の連中という事になる。笑うしかないくらいヤバい事になる。


『ええ、連中が持ってた連絡用のスマホは既に……はい回収して、アクトの連中が契約を切ってます』

 おっさん刑事の考えた通りに、連中は連絡を取り合っていたって訳だ。

『この件は拙いですよ。連中、拉致用のロープやナイフだけじゃなくクスリまで用意してたんですから……マスコミへの対策はしていても、実際のところ署の人間は多くがこの件について知っていますし、警察官ですからね、俺みたいに全部が全部もの分かり良く立ち回れる様な人間ばかりじゃないですよ。今回の件は何れ表ざたになりますよ。そうなったら俺みたいな下っ端だけじゃなく課長だって尻尾切りされますよ』

 つまり、北海道警察のかなり上の人間がこの件に関わっている……逆に言えば、北海道警察のかなり上の立場の人間を動かせるという訳で、絞り込むのは簡単になる。

 あの九人の中にそれほどの大物の関係者……否、どんなに大物だったとしても警察を動かして犯罪者に協力させるには大きなリスクを追う事になる。

 それでも引き受けるとすると、かなり近しい相手、普通は身内と呼べる人間に限られる。


 主に話を聞く必要が出てきた。

『主。お楽しのところ申し訳ありませんが、例の九人の身内で警察を動かせるような影響力のある人間に心当たりはありませんか?』

『あるある! あの三人のお嬢様だよ』

『お嬢様?』

『うん、自分達で良く自慢してたから憶えているよ』

 ああ、確かに家の自慢しそうな連中だったな。

『それで、どんなお家自慢でしたか?』

『先ずは父親が国会議員と、次にパパが大企業の社長と、それからダディがヤクザで大きな組の若頭。言っておくけどパパとかダディは本人達が言ってたんだからね』

 一瞬、主が連中を皮肉っているのかと思ったが、人前でパパとかダディとか抜かす女子大生……その様子を想像して我とした事が、心の中で「うわっ」って感じで怯んだ。

 

『えっと、そいつらのそれぞれの苗字に加えて、国会議員、大企業の社長、ヤクザの若頭で検索して貰えますか?』

『今回は私が調べるけど、今度札幌に戻ったらスマホを契約して、モモちゃん専用に渡すからね』

 そうして貰えると助かる。いい加減、ネットカフェの妖精さんの贈物も、ネットで話題になってきているので、そろそろ限界を感じていたところだし、我がネットカフェの妖精さんでいられるのは、ネカフェの客が眠りに就く深夜帯だけと不便だった。

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