第39話
注意:この物語はフィクションです。作中の人物及び団体は架空の存在であり、実在する如何なる人物・団体とは関係ありません。
十分足らずで主からの返信があった。
『お嬢様壱号の金代 加奈子(かなしろ かなこ)の父親が、小選挙区北海道2区選出の衆議院議員の金代 好一(かなしろ こういち/カネダイスキー)で、お嬢様弐号の瀬古 桃里(せこ とうり)のパパが、大手不動産・観光業の社長の瀬古 貫(せこ いずる/せこいズル)で、渡西 麗香(やぐら れいか)のダディが、道内で強い勢力を持つ反社の北海連合の若頭の役お嬢様参号が渡西 忍(わたせ しのぶ/とせいにん)でよろしいですか?』
『うん、ネットで調べた範囲ではそうだったよ』
『すると、警察に手を回したのがカネダイスキーさんだろうね』
『カネダイスキーさんって誰?』
『ほら、金代でカネダイと読めるし、好一の好はスキで、一は長音記号に変換すると、金大スキーになるじゃないですか?』
『確かに贈収賄疑惑が何度も取り沙汰されている政治家だね……ぷっ、金大好きーって汚職しそうで政治家の名前として不利だと思うけど、改名しないんだね』
まあ世襲政治家なら、簡単に簡単に家名は変えられないだろうが、そもそも苗字はともかく下の名前の方は、何も考えないで決めた様な適当さを感じる。
でも好一で、一が入ってるんだから長男だよな。政治家一族なら長男が生まれて適当な名付けを行う理由が無い……真剣に考えてこれなら馬鹿だな。
『金銭面で金大好きーを支えていたのがセコイ ズルで、犯罪の実行面をサポートしたのが渡瀬忍というヤクザの大物って事でしょうね』
『これってかなり拙い状況だよね?』
『いえいえ、そんな事はありません。ネットで調べたらすぐに分かるような人間だからこそ、致命的な弱点を持っているものです。そして我はその弱点を抉り出して世間にさらけ出してやる事が出来ます。というかやってやりましょう。我が主に手を出そうなどと愚か者に相応しい結末を見せて上げましょう』
『モモちゃんが開催する地獄と言う名のフェスティバルの主催者の欄に何故か私の名前が大々的に書かれている状態……』
『先ずは社長さんから可愛がって上げましょう。たかが一代議士なんかよりも会社の看板の方が有名ですからね、一番体面を取り繕わなければならない生き物ですから。大ダメージですよ』
『モモちゃん……頼りがいがあり過ぎるよ』
『勿論、こう見えて龍種の中では責任ある立場にありましたから』
実際はそれ以上の立場でしたけどね。
『一番ネームヴァリューがある社長さんが、大きく新聞紙面を賑わせて、そいつと代議士が癒着していたとなると素敵な化学反応が起きると思いませんか』
『庶民には全く分からないよ』
『分からなくて良いのです。本来は主が知る必要もなく、全てを解決するのが我の役目なのですから、その点に関して我の力不足でご迷惑をかけ申し訳ございません』
『迷惑をかけているのは私の方だよ』
『いいえ我が至らぬ故の始末なのです。我は幸せに日々を過ごす主と共にある事こそが生きる目的です。今回の件は主にとってだけではなく我にとっても大変不愉快な状況なので、分かり易く言いますと、これは主の分、これは我の分、これも、これも、これも我の分という感じな我のうさ晴らしなのです』
『もう一発くらい私の分も入れておいて』
現在我は東京に居る。
元々北海道の大手建設会社から、バブル期に業績を上げ、そして奇跡的にバブル崩壊を上手く乗り切って現在はゼネコンの一角に名を連ねている瀬古建設の本社の社屋に侵入を果たしている。
我のスキル【縮小】の限界の長さ1/20で、体長は1㎝を切る8㎜の身体をもってすれば、そこに人の出入りがある限り、何処にだって進入可能だ。
まあ、例え人の出入りが無くても今の身体の大きさなら、直径2㎜程度の穴があれば問題なく出入り出来るし、その程度の穴なら厚さ30㎜の鋼鉄製の壁でも、音を立てないように慎重に削っても一分間ほど時間を貰えれば穿孔可能だ。
攻撃系の魔法なら一撃で穿孔可能だが、大騒ぎになるので使えない。
そして今は社長室の金庫の中だ。関係ないが二回目のペンギン散歩タイムがやっている時間だ。主がちゃんと動画撮影していてくれるか心配だならない。
こんな時間になったのはセコイ・ズルの奴が、中々戻ってこなかったのと、やっと戻って来てPCを起動したので仕事をするのかと思えば、スマホで秘書を呼び出し、三分後に現れた美人秘書とイチャイチャというかエロエロエッサイムしているのを撮影するのに忙しかったからだ。
別にスケベ心を出してしまった訳ではない。
魔龍として三百年以上を生きて、今はエゾモモンガの身体である我は、人間相手に性的興奮をもよおす事は最早ない。だからと言って魔龍や他の龍族、そしてエゾモモンガにもよおす訳でもない。良く考えると枯れてしまっているな我。
後ほどこの社長室から社長のPCに登録されている連絡先という連絡先に、この動画を添付して送りつけてやる予定だ。
ついでに社内一斉送信もしてやろう……楽しい事になりそうじゃないか。
しかも動画を編集するのは無理なのでそのまま、つまり無修正だ……絶対に無理とは言ってない。
まあ秘書も決してセクハラを強要されている訳でもない様なので、アングル的には可能な限り顔は外して撮影したが、まあ服装や声で分かる人間には分かったしまうだろ。
まあエッサイムしながら、甘えた声でズルにおねだりしている様なので我的には同情の余地なしだった。
十分に撮影を済ませた事なのでズルのスキャンダルとしては十分なネタは手に入れたが、肝心なのはズルとカネダイスキーとトセイニンの繋がりを示す証拠も手に入れる作業を行う必要があるので、エッサイム中の二人は夢の世界へと招待した。
ちなみに【眠り】の魔法には幾つか種類があり、睡眠導入が眠気を感じて意識を失う優しいタイプと、ガツンと殴られたような衝撃を受けて失神するタイプ。とても強い恐怖に心が凍り付き気絶するタイプ。
今回採用したのは三番目を選択した。そして夢の内容は沢山あるのだが、本人が最も嫌悪感を抱くストレスたっぷりのタイプの夢をプレゼントしておいた。
金庫の位置は棚がスライドしてその後ろに何かがあるタイプだった。
動画サイトで良くある、アメリカの金持ちが遊び心で作る隠し部屋で仕掛けと同じだった。
隠し金庫を見つけると、後の侵入は簡単だ。
どんなに堅固な金庫であろうともドラゴンの牙の硬さを受け継いだ齧歯目の前歯は例えオリハルコンであろうが齧り取るだろう。
我の牙を手古摺らせるとしたらタングステンの合金である超硬合金が必要になるだろうが、そこまで厳重な造りでは無かったので結構簡単に自分が通れる小さな穴掘って侵入した。
『それじゃあ、中身は全部頂いて行きます! 一部は直ぐに返してやるけどな……そうお前がサイコーに絶望するタイミングでな』
証拠の隠滅なんて事はしないよ。隠し金庫の中から消え去った証拠物件が、強制捜査が入って社長室に踏み込まれたと思ったら、何故か部屋の片隅に積み上げられているという、不条理な悪夢をプレゼントだよ。
方法は【インベントリ】は収納した物を任意のタイミングで離れた場所にでも出す事が出来る。
ただし、自分がその場で設定した場所にだけだが、今回は全く問題がない。
よ~し、前世の我が少し戻ってきた様で心強いぞ。
悪党にとっての天敵は正義などでは無い。悪と正義は法や道徳、宗教観等を挟んだ表と裏の関係に過ぎない。
だから悪党にとっての本当の天敵は、より強かでより悪い悪党……つまり我だ。
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