第37話

 ホテルを出て、出口の前の道を右へと出る。

 この時期の北海道の道路は、googlemapのレイヤーを航空写真にして、アップでセンターラインが確認出来ない様な道路は避けるべきだ。早朝は除雪が入っていない可能性がある……早朝でなくても除雪されない可能性はある。

 人目の無い場所で停めて車を降りると【飛行】の出番だ。


『ところで主、このまま札幌に行って。シークレットスニーカーを売っている店に行く予定ですが、そこの住所が東区。今一番行きたくない場所なんですよ』

『シークレットスニーカーって何?』

『履くだけで身長が伸びたかの様になるシークレットシューズのスニーカー版です』

『それで私の特徴である身長の問題を誤魔化すのね』

『身長が5㎝程度も伸びて見えれば、主も小柄で通用しますから』

 そう下駄ならずシークレットスニーカーを履かせてどうにか150㎝になるのである。

『小柄で通用しないってどういう意味かな?』

『……答えは、主の心の中にもあるはずですが?』

『せ、正論過ぎて何も言えない』

『良いですか、185㎝の人がシークレットスニーカーを履いて190cmになっても一見しただけでは気付かれないかもしれませんが、145㎝の人が150㎝になればすぐに気付きます。120%気付きます。これは動かし難い事実です。感情面を無視してその事実だけご理解いただけれ幸いです』



 先ずは札幌市北区あいの里を目指す。やはり北側から札幌入りした方が、物理的にも精神的にも楽だからだ。

 着陸地点は、人通りが少ない事を良く知っているJRの線路沿いの北側の住宅地と線路の間の狭い散歩道とする。前々世で良く自転車で通っていたので人通りの少なさは折り紙付きだ。

 線路沿いなので各駅前には、今回の目的地に一つであるドン・キホーテまでのバスが停まるバス停があるので、それに乗って移動する。

 ドン・キホーテでは変装用に主が普段は着ないような衣服を購入し着替て、そこから1㎞ほど歩いて靴屋に向かい、シークレットスニーカーを購入し履き替える。


 黒色でシンプルなシルエットのラム皮のジャケットにキャップを目深に被り、デニムのパンツとスニーカー。身体を動かすのが好きそうでヤンチャな……中学生の様な見た目になった。申し訳ありません主。今でも高校生である可能性はゼロではない程度の見た目でした。


 しかし全然主っぽく見えないのは確かだ。我がそう思うのだから間違いない。

 似合う似合わないの話なら、いつもの着こなしの方がに主には似合っていると思うが、この格好は変装としては中々の出来だと思う。

 後は身長が伸びれば高校生くらいには見えるだろう……多分。

 だが、雰囲気はかなり変わっているので、例え主を捜している者の視界に入っても特に注目する事も無くスルーされるだろう。


 これで我が札幌で警察の中の連中の協力者を突き止め、証拠を集めている間に、主が旭山動物園の冬の風物詩であるペンギンの散歩を楽しんでいても、旭川科学館サイパル(サイパルはScienceとPalで科学仲間の意)でプラネタリウムを楽しんでいても安心出来る……正直我も見たい。


『主、ペンギンの散歩は動画で撮影してきて下さいね』

『任せて』

『それからこれを肌身離さずに持ち歩いて下さい。主に危機が迫った時、主の場所を我に教えてくれる魔道具です』

 指輪型の魔道具を主に渡す。

 『また、これを我と会話するためのペンダント型の魔道具に近づけると、我との会話が出来るようになるので、指輪を左の人差し指に着けておいて、使用の際は、ペンダントがある胸の辺りに左手をおけば使えるようになります』

『ありがとうモモちゃん……ところで、それからって何? 順番が逆じゃない。ペンギンの散歩の撮影の方が、私の安全よりも重要度が上な気がするんですけど?』

 ……しまった。実は主には先程の魔道具と同じものを既に衣服や持ち物に幾つも忍ばせてあるんだ……我は娘を大事にするお母さんよりも心配性な魔龍王故に。

 あの魔道具は、普段からそんな物を仕込んであったことを主に知られない為のフェイクで、実際は強力な障壁を張り巡らせる魔道具だ。しかもそれと同等の防御手段は、すっかり主の愛機となったPS-SX720HSREのカメラケースに仕込んであるので、我的には重要度はそれほど高くないので、ついうっかりとペンギンの散歩の動画のプライオリティの方を上げてしまった。

『誤解があった様ですが、そもそも主の安全対策は我にとっては当然過ぎて呼吸するのと変わりないのです。今回は我が傍にいることが出来ない替りとして魔道具を用意させて頂きましたが、危機に際して主をお守りする手段は幾つか持ち物の中に隠しております』

『守る手段ってどいういうの?』

『危機を探知する魔道具に、それと連動し瞬時に強力な障壁を展開する魔道具。その後、強力な光を放つ魔道具と姿を消す魔道具が起動し、最終的に主を飛行させて我の元に運ぶ魔道具が起動します』

 自慢気に胸を張る。

『あう……想像を大きく超える答えが返ってきた。モモちゃん本当に心配性』

 いや~照れるな……いや、これは過干渉気味な親に対して娘が反発している構図?



 主を旭川市内に潜り込ませるために、札幌を出て北東の方向に飛び、旭川空港の南側から東へ回り込むように遠回りして忠別川に達すると高度を下げて、凍結した川面の上を川下方向へと進み旭川の市街地へと移動する。

 基本的に北海道の冬は土手の上の散策道や河川敷等は除雪される事なく雪が積もり放題になるか、雪捨て場として使用され雪の山になるのかの二択で、川面の辺りは川沿いからは見る事は出来ない。唯一見られるのは橋の上から見下ろすしかない。


 ツインハープ橋の下で川面から離れて川の北東側のへと出ると、バス停を目指して徒歩で移動する。

 徒歩と言っても歩くのは主で、我は主のポケットの中でスマホを操作していた……『あっ!』

『何かあったの?』

『はい。どうやらサイパルは今日は休みの様です。札幌青少年科学館と同じく科学館系の施設は月曜が休みでした……申し訳ありません。我の曜日感覚がずれていたようです』

 実際、毎日が日曜日の様な生活なので曜日感覚が働かない状況だった。


『それじゃあ今日は旭山動物園にするから、一度宿でチェックインして荷物を置いてから出かけるわ』

 主は気にしていなかったが、危く明日の主の予定が白紙にするところだった。

 今後、更なる注意が必要だ。(注意:二月二十三日月曜日は国民の祝日で月曜の休みは一日後ろにずらして普通に営業しています。つまり作者の注意不足です。しかし、それを前提にした分の話が五万文字ほど出来上がっているので、今回はこのままで話を進めさせて頂きます)


 ちなみに旭山動物園は、夏季と冬季の営業の間に数日の休園日がある以外は基本年中無休だが、我は旭川まで行ったのに旭山動物園の臨時休業を食らった事がある……我ながらある意味で見事な引きの強さに泣ける。



『旭川滞在中は警察対策として車を使わないでいただくので、お手数を掛けますがバス移動して頂きます。車は我の【インベントリ】にしまっておきます』

『それは仕方ないよね』

 実は我としては警察対策以上に、主独りでの運転は胃袋に穴が開きそうなほど心配だったので、ご納得いただけて幸いだった。

『それでは旭山動物園を楽しんで下さい……くれぐれもペンギンの散歩の撮影を忘れませんように……失礼します』

 忘れられない様にもう一度しっかりお願いしておいた。

『もう……行ってらっしゃい。頑張ってね』

 そう主に送り出されて我は札幌を目指す。頑張ってと言われたのだから、頑張って今日中に決着させてやるつもりで行くよ!


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>@ryo0610


投稿前の確認・修正していない部分までコピーして投稿していて笑った

しかも一話だけじゃなく二話もw

>我のレベルは500を超えている

これは「前世の我のレベルは500を超えている」が正解です

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