第1章 秋津荘の基礎 - 1978年〜1980年
第1話 基礎 - 1978年春
ここは元々、沼地だった。
戦前、小さな池があり、地元の子供たちが魚を釣ったり、夏には泳いだりしていた。
基礎を掘っている時だった。
「ガリッ」
硬いものにぶつかる音。
古い
文字は風化していたが、鎮魂の二文字だけは読めた。
明治時代のものらしい。
親方が素手で触れた時、妙な感触があったという。
「ぬるっとした粘液みたいなもんが、石の表面にへばりついとった」
触った瞬間、指先が痺れた。
生臭い匂いもした。
池の底の泥を
手を洗っても、その匂いは三日間消えなかった。
夜になると指先が
医者は「
これは皮膚の病気じゃない。
「どうしましょう」
作業員が尋ねた時、親方は迷った。
だが地主が工期を急かし、処分費用を惜しんだ。
「そのまま埋めろ」
石碑は粉砕され、基礎に混ぜられた。
死者を鎮める場所の真上に、201号室の床が張られた。
――工事中も、異変は続いた。
「201号室の床板を張る時だった。作業員の一人が『下から誰か見てる』って言い出してな」
床下を覗いても誰もいない。
だが確かに視線を感じた。
冷たい、子供の視線を。
作業員の何人かは、夜中に子供の泣き声を聞いたと証言している。
工事現場の仮設トイレで用を足している時、隣の個室から子供のすすり泣く声が聞こえた。
ノックしても返事はない。
ドアを開けると、誰もいない。
ただ便器の水が青白く濁り、底に小さな手形のような跡がついていた。
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