第2話
爪が膝に食い込む。
胸の奥が痛い。
その時、黒服が静かに近づいてきて、ユリさんの耳元で何かを囁いた。
ユリさんはわずかに笑って、瀬崎さんへ体を向ける。
「瀬崎さん、ごめんね。ちょっとだけ席、外すね」
「おぉ。じゃあシホちゃん、頼むよ」
軽口を返す瀬崎さんに一礼し、ユリさんは黒服の後について奥へと歩いていく。
ヒールの音が控えめに響き、その背中は堂々としていて優雅だった。
その先にあるVIPルームには、穂高さんがいる。
すぐそこにいるのに、近づくことはできない。
ただ、背中が消えていく方向を視線だけで追い続けるしかできなかった。
……会えた。けど、どうやって……。
声をかけるタイミングも、そこに踏み込む勇気もない。
今の自分はお店のキャストでしかない。
こんな姿で近づいて、軽蔑されたらどうしよう。
あの冷たい目で見られたら、拒絶されたら……。
怖くて想像もできない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます