甘く、とろけるⅢ
ゆか
黒い瞳
第1話
……ほんとに、来た……。
掠れた声にならない声が胸の奥で鳴る。
震えと眩暈が一気に押し寄せ、指先から体の奥まで熱が走る。
私の視線は一点から動かない。
久しぶりに見るその顔は記憶よりも冷たく
て、遠い。
穂高さんが店内を見渡したのが分かって、慌てて前に向き直った。
その視線がほんの一瞬だけ私が座るテーブルを掠めた気がして、目が合ってないのに、心臓が跳ね上がる。
会いたかった……のに、今すぐ逃げたい。
そんな矛盾が胸の奥でせめぎ合う。
穂高さんと、その後ろには真湖さんもいて、二人は黒服に案内され、左右に分かれた席の真ん中の通路を真っ直ぐ歩いていく。
後ろを通った時、背中が馬鹿みたいに熱くなって危うく持っていたグラスを落としそうになった。
二人は席に一度も座ることなく、奥のVIPルームに消えていった。
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