第21話 禁止された食事
「ほら行くよ」
「嫌だ」
「遅れたらてめぇのせいだからな」
冬休みに入って1日目。玄関前で龍牙が階段の支えを掴みながら抵抗している。
現時刻7時20分。10時45分の新幹線に乗ってじいさんの家へ行くのだが、末っ子が渋っている。
少しだけ引きずられたが、今度はドアの縁を掴んで。
「残るの?」
「残る」
殴ろうとしていた
「食事は?」
「霊を食べるからいい」
「それは今禁止されてるだろ?」
約束を破ったことへの謝罪はまだされてない。だからといって、それを責めることはしないが、禁止となった以上謝罪しないかぎりは、食事をすることを許しはしない。
「
そう問えば龍牙は静かに頷いた。
「じゃあまた約束しよう。龍牙が約束を守り続ける限り、俺が
「説得?」
「食べないとお腹が減るんだろ?」
とはいえ、新幹線に乗らないと行けないから、ここで時間を食うわけにはいかない。幸い龍牙は俺の話を聞くために、背中側に回った俺の顔を見ている。
あと少しで車の中だ。
「それでいい?」
「……ん」
「じゃあ、出発しようか」
俺の言葉を聞いた龍牙は驚いた顔をして周りを見た。
逃げ出そうとするから、車から出られないようすぐさまドアを閉めた。
「大丈夫。母さんと父さん、そして俺や慶はずっと味方だから」
「僕……」
「騙したみたいでごめんだけど、時間ないからな」
「観念するこったな」
悪役みたいな笑い方をする慶と俺で挟まるように座った龍牙。一瞬で不機嫌になって慶の足を蹴り、蹴り返されていた。
ここから駅まではそう遠くない。新幹線に乗ってしまえばあっという間にじいさんの家に着く。
それまでの暇つぶしは大変だけど。
「……いつ解除するの」
「龍牙が謝ったらな。ただ、上辺だけは許さないぞ」
霊を食べることを禁止され、行動も監視されている。そのことについて龍牙が聞いてきたが、謝罪してこない限りは許可すること出来ない。
「お腹すいた」
「それも仕方ないと諦めるんだ。自分で俺との約束を破ったんだろ?」
「けど……」
「けども何もない」
このやりとりを聞いている母親が自分の鞄をあさり、何かを渡してくる。それは個包装されたチョコと飴だった。
「お昼まではまだ時間あるからこれでも食べて」
「……ありがと」
そうじゃないんだよなって雰囲気を出している龍牙だが、素直に受け取って食べ始めた。俺も少し貰おうかな。
「おい、俺のぶんも」
後部座席すべてを使って寝ていた兄にお菓子が当たり、飛び起きた衝撃で少し車が揺れる。
何が起きたんだという顔で呆然としていたが、自分の目の前に落ちているお菓子を見て、自分の鞄にすべて入れていた。
「兄貴、それ少し俺にも」
首を横に振り、拒否している。もらったものはすべて自分のだと。
さすがに可哀想に思えて、俺の分を半分分けた。
「ありがとよ、さすが相棒」
「今あまりお腹空いてないしね」
あと少しで駅にも付く。もしかしたらじいさんの家で歓迎のために多くの料理が作られているかもしれない。
何も遅延とかなければ、昼近くにはつくだろうしな。
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