第5話 止めてくれないか、情報量の洪水をワッと浴びせるのは。

 今回は物語における構成のお話をしていく訳なんですけども、僕の書き方と云うのは、漫画をベースとした方法である為、小説に流用するにあたって適切ではない部分も存在しているという事に留意して頂きたいと思います。



 どんな人が小説を読みに来てくれるのか、と云うのは様々だとは思います。


 何処から来たのか、何を目的に来たのか、どうやって辿り着いたのか、様々な状況があると考えられますね。


 文章というものは、絵の様に情報量が多くありません。同じ目を通して得られる情報にも拘らず、その情報量にはかなりの差があります。


 僕が漫画を描く上、又はストーリーを作る上で感じている事を書いていきます。


 娯楽ってラーメンみたいなもんだと思うんですよね。食事って摂取できる回数が限られているじゃないですか。だから自然と選択することになるんです。


 どうせなら美味しいものを食べたいじゃないですか。それは時間のない中でコンテンツを選ぶのも同じだと思うんですよ。


 ラーメンで例えたんですけど、その一杯目を食べる時に、そのラーメン独自のルールがあって、それを憶えて実行しないと食べられないって決まりがあったらスーパー面倒くさくないですか?


 まず右手で箸をもって、表面の脂を箸に馴染ませ、ラーメンの底から麺をすくい上げて表面に出し、それからスープをレンゲですくって香りから楽しむ……。


 とか言われたら『好きな様に食わせろ!』ってなりますよね。


 それと同じく、物語の最初に物語独自のルールを語るのはご法度だと思うんです。これはどこどこの話で、何があって、独自の設定が、独自の固有名詞が、何々の前提知識が~ ってなったら読者は負担に感じるんですね。


 もちろん、5W1Hの法則に則って、いつ、どこで、誰が、何を、どうした?っていう説明は必要なんですけど、



【読者が新しく覚えないとならない知識がそこに含まれている】



のだとしたら、それは追々で良いと思います。


 まずはラーメンを食わせてくれ!って事なので、割り箸を割って、レンゲでスープを飲む。これをまずさせるべきなんですね。


 読者の誰もが知ってそうな情報を開示して、まずはスープを飲ませましょう。


 現実世界なら自然と生きる中で学んだ知識はあるので、それほど気にする事ではありませんが、オリジナルの異世界ってあなたの頭の中にしかありませんよね?


 最近はファンタジーゲームなどの浸透により、ドラクエやFFのおかげで説明しなくてもある程度わかる知識はあると思います。ギルドとかレベルとか、ステータスとかですね。


 固有名詞をいきなり使うな。使うとしても3つまで。の気持ちが必要です。読者はあなたの世界に初めて触れる訳ですから、なんも分からないんです。


 まずはスープを飲ませろ。という話ですが、まずは読者の気の引く、気になる。そんなイベントを起して物語に引き込みましょう。味見です。なるべく濃い味のガツンとした印象を残しましょう。


 安易なものとしては、大きな成功や失敗。大きな選択。人生の転換期、九死に一生。ただいま戦いの真っ最中。などがあります。いきなり物語の中盤のシーンを出して、ある程度見せてから時を戻してもいいでしょう。


 今回自分の企画を経て、読者の目線で作品をいくつか読んだのですが、独自の世界観を持つ作品は、そのほとんどがこれでした。


 異世界ものなどを好んで見に来ている人なら多少耐えられるでしょうけど、それ以外は無理です。コンテンツは多い。作品は玉石混交。引き込まれなければ読むのを止めればいいのです。無料なんですから。


 物語の中盤から面白くなると云われても、そこまで辿り着けない読者が殆どな訳です。物語の全てに読者を引き付けるギミックをたっぷりと用意しましょう。


 そのギミックは物語に合わせて作者が考えるものなので、頑張ってくれ。

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