第15話 声にする勇気

 ライトが眩しくて、観客席の顔はほとんど見えなかった。

 それでも、無数の視線が俺に注がれていることは分かった。

 マイクを握る手が震え、汗でマイクが落ちそうだ。


 ――逃げるな。


 胸の奥で小さな声が囁いた。

 今ここで語らなければ、きっと一生後悔する。



過去を語る


 「……俺は、普通のことが出来ませんでした」


 会場が一瞬、静まり返る。

 言葉を継ぐのが怖かった。けれど、口は自然と動いていた。


 「忘れ物ばかりで、締切も守れなくて。

  大学でも、社会人になってからも、“普通にやれ”って叱られてばかりでした。

  恋人にも、『もう疲れた』って言われて……

  気づいたら、布団から出られなくなっていました」


 喉が詰まり、声が震える。

 けれど、その震えも隠さなかった。



出来ること


 「でも……一本の動画が、俺を救ってくれました。

  誰かが『面白い』って言ってくれた。その言葉で、俺は生きてていいんだって思えたんです」


 客席からざわめきが広がる。

 涙ぐむ人影が見えた気がした。


 「9割の人が出来ることを、俺は出来ない。

  でも――1割の人が出来ないことなら、俺は出来るかもしれない。

  それが loudy です。俺たちは“普通じゃない”からこそ、新しいことを生み出せる」



拍手の渦


 言い終わった瞬間、会場が大きな拍手に包まれた。

 その音は波のように押し寄せ、俺の胸を震わせた。


 ――ああ、やっとここまで来たんだ。


 ステージ袖で、美優が涙を拭いながら笑っていた。

 その笑顔が、何よりの答えだった。

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