第14話 広がる景色

 loudyの動画は、もはや「ネットで話題」では済まされない規模になっていた。

 大手メディアに取り上げられ、企業からの依頼も増え、フォロワーは数十万人を突破した。



初めての大舞台


 ある日、大規模イベントから出演依頼が届いた。

 「次世代クリエイター特集」

 そこに loudy の名前が並んでいる。


 リハーサルで立った広いステージ。

 眩しいライトと、ざわめく観客席。

 胸の奥がざわついた。


 「創真、大丈夫だって」

 佐伯が肩を叩いて笑う。

 仲間の存在が心強かった。



美優の支え


 イベント前日。緊張で眠れない夜、美優に電話をかけた。

 「失敗したらどうしようって考えると、頭がぐちゃぐちゃで」

 震える声に、受話器越しの彼女は静かに笑った。


 「創真さん。あなたが失敗したとしても、私は変わらず隣にいますよ」


 その一言に、涙が滲んだ。

 「……ありがとう」

 彼女の声は、闇の中で灯る光のように胸を照らしていた。



拍手の渦


 イベント当日。

 ステージに立ち、マイクを握ると、目の前に広がる観客が一斉に湧いた。

 「loudy!」「待ってた!」

 名前を呼ぶ声が、波のように押し寄せる。


 胸が震えた。

 俺はここにいる。

 “普通”には出来なかった俺が、“普通じゃないこと”でここに立っている。


 仲間の笑顔と、美優の存在が、その事実を確かなものにしてくれた。

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