ブロック


「わたし、結婚するなら梅ちゃんと結婚する。ふたりでハワイでかわいいお揃いのドレスを着て結婚式しよーよ!」


 大学へ進学して少し経った頃からさくらはそんなことを頻繁に言うようになった。何故急に? と思わないでもなかったが、私としてはそれが本当になれば願ったり叶ったりなので「そうだね~」と返していた。





 なのに、さくらは結婚した。

 私以外の人間と。

 これを裏切りと言わずなんと言う。





 カッときた私はさくらからのメールも通話も拒否設定にした。

 直接会いに来て謝るまではこのブロックを解いてなんてやらない、そう誓った。

 だけど、さくらは一向に私の元へは訪れなかった。母の話では実家にも全く帰っていないらしかった。

 ああ、そうか。そういうことか。結婚を機にあの裏切り者さくらは私ごとこの何もない田舎町を捨てたのだと──その時の私はそう思ったのだった。

 それから私は彼女と連絡を取ることも直接会うこともせず、何度か桜の季節を見送った。優雅に、そして可憐に咲き誇る桜を見るとさくらのかわいい笑顔を思い出して吐き気がした。

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