未明、山中にて


 じんわりと浮かんだ汗を拭う為にシャベルを動かす手を止める。

 軍手を外した手の甲で額を擦っていると、赤ちゃんの泣き声が聞こえた。

 の後方に停めた車に駆け寄って助手席を見ると、とても愛らしい赤ちゃんが目をギュッと閉じてふぎゃふぎゃと泣いている。

 どうしよう、何で泣いているんだろう。子育ての経験なんてない私にはさっぱり分からない。ミルク? それともおしめ?

 パニックになりながら無意識に穴の方を振り返ったその時、赤ちゃんは泣き止んでまたスヤスヤと眠り始めた。

 ホッと胸を撫で下ろし、私はを再開させる。

 早く終わらせて、赤ちゃんをちゃんとしたお布団で眠らせてあげないと。その一心で私はせっせと掘り返した土を穴に戻していく。

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