裏切り


 さくらがいなくなった、その喪失感は計り知れない程だった。

 しかし……。


「梅ちゃんと遠距離恋愛になるなんて嫌~! 毎日連絡するからね! うざがらないでね!!」


 そう宣言していた通り、さくらは毎日欠かさず私のケータイに電話をしてきた。

 寝る前の1時間、さくらとお喋りする時間が私にとってとても大切でかけがえのない至福なものとなった。



 さくらはしょっちゅう地元の田舎町へと戻って来た。彼女は長期休暇も殆ど実家で過ごしていたのでふたりで遊びに出掛けた。その度にさくらは……。


「やっぱり梅ちゃんと遊ぶのが一番楽し~! このままわたしのアパートに連れて行っちゃいたい!」


 そんな嬉しいことを言ってくれた。それを聞くと私は満更でもない気持ちになっていたが……今思い返せばそれはメッセージだったのかもしれない。

 さくらは自分の話を全くしなかった。大学の話、新しい友達の話、一人暮らしの話、バイトの話……そういうのが沢山あってもいいはずなのに彼女は私との思い出だけを口にした。私も私でそれが心地よかったので何も聞きはしなかった。……聞けばよかった、なんて今は思うがもう遅い。



 私はてっきりさくらは大学を卒業すると地元に戻ってくるのだとばかり思っていた。

 しかし彼女はそのまま帰ってくることなく県外で就職を決めて……そして程なく

 メールでのお手軽な結婚報告に足元がガラガラと崩れ落ちる。そのままドン底へとつき落とされて……私は激しい憤りを覚えた。

 とんだ裏切りだ。私達はずっとふたりだって言ったのにっ!!

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