第3話(平和回1:午前)

 お、やっと来たな。

 結局団地は保護で取れて良かったな。

 じゃあ...早速...朝ごはん...行くか?


 ...よし。ノリがいいな。

 え、朝ごはんってどこに行くかって?

 あぁ。あの酒屋、実はモーニングやってるんだよ。


 ...まあ確かに、ほぼカフェみたいなもんだな。

 ほら、入るぞ。


 うっすマスター。いつもの席に案内してくれ。

「おはよう、常連さん。その調子だと、屋根裏部屋になるよ?」

 おっと忘れてた。ごめんごめん。2階の端の席に案内してくれ。


「もう案内しなくても行けるでしょ?座っておいて。」

 オッケー、行っとくわ。


 ...え、この酒屋、二階席あったのかって?

 あるよ。ここ2階建てと屋根裏だから。

 屋根裏はもう二度と行きたくないけどな。


 ...あっちだな。ここの階段きついと思わない?

 だよな。いつか誰かこけるぞ。


 ...よし。荷物は座席に置いといて大丈夫だから。

 早朝に行っといてよかったな。結構空いてる。


 ...さて。下に行って注文し...あ、そうだ。メニュー。

 ごめんごめん。うちが注文するのは決めてるから、君の分を忘れてた。

 メニューは机の上にあるから、そこから見てみて。どれにする?

 今日はおごらないからな。


 ...それ?パンケーキ?じゃあドリンクも...

 ...それね。

 ずっと思ってたけど、君案外普通のものしか食べないんだね。

 うちはもう決まってるから、下に行こうか。


 マスター。"はちみつパンケーキ"、"アイスミルクティー"と、いつもの"シロップ・ライトケーキ"、"キャラメルミルクラテ"を頼む。

「わかった。今日はじゃないんだね。」


 もう黒い液体を食わされるのは嫌さ。

 代金はここに置いとくから、上に戻っとくよ。


 ...え、シロップ・ライトケーキってなんだって?

 あー。まぁ、朝に食べるケーキ、みたいな。

 まぁ、見ればわかるさ。


 お、呼び鈴が鳴ったね。あそこを見てみて。

 あそこにエレベータがあってね。手回し車で動かす感じなんだけど。

 ほら、送られてきたじゃん?あれを取って...


 いや、一旦隣の台に乗せるだけで大丈夫だよ。

 で、そしたら呼び鈴を鳴らして...

 よし、戻ったね。じゃあうちらも戻って、さっそく喫しようか。


 ...君も、この世界には慣れてきた?

 いや、そういうことじゃなくて。


 この世界って、ほら。自分で言うのもなんだけど、変な世界じゃん?

 なんかさ。この世界に来る人は、なんらかの"悩み"を抱えてるらしくて。

 君も何か、"悩み"を持ってるのかな...って。

 ...ほう?

 ...

 

 なるほどね。そんな悩みがあったんだ。

 まぁ、ずっと旅をしてればいつかは消えるさ。


 え、うちの悩みはなんだって?

 ふふ、秘密さ。君の悩みが一つ増えちまったな。

 いや、うちの悩みも増えてるけど。君のせいで。


 てか、こんな置いてると冷め...

 ...なんだって?

 ...

 ...いや、悩みが消えたことはないよ。

 ただ、こうやってぼーっとしてると忘れられる。


 まあ、結局は頭の中に残ってるんだけど。

 ...なんか暗い話してごめんな。食べようぜ。

 ...

 ...お前、また笑ってないか?どうした?

 ...

 ...

 あぁ、黒目の色?


 そういえば言い忘れてたけど、うち感情が目に出るんだ。物理的に。

 "トランスアイ症候群"とか言ったっけな。今はどんな色?

 ...黒めのピンク?マジ?


 すげー変な色してんだな、今。

 喜怒哀楽...なんだっけ。緑...赤...青...ピンク...だっけ?

 じゃあ今、楽しいってことか。見事にバレてる。


 なんかちょっとアレだな。

 ...え、目の色がオレンジに変わってる...?

 あー。えっと、スキップで。

 ...

 いやだから、何の意味のねぇから。別に。

 ほら、黙って食べるぞ。

 ...もういいから!本当に!オレンジに何の意味もないって!!


 あー...なんかすげぇ体あったまった...

 お前のせいだからな。


 そういえば、次はどこに行く?

 ...あぁ、市場?昨日からずっと気になってたって?

 じゃあ行こうぜ。朝は空いてるから。

 

 ...え...オレンジ?

 はぁ...しつこい奴は嫌われるぞ?

 そんな突っかからないで。


 目の色も青色になって...え、サーモンピンク?

 んなわけがねぇじゃん。そしたら怖ぇよ。

 口元緩んでる?んなわけ。苦笑いしてるだけだわ。


 あそこが市場だな。やべえやつもあるから気をつけろよ?

 ...つうか、お前その顔は絶対やべえ物買うだろ?

 先に言っとくけど、うちはおごらないからな。


 ん...なにそれ。

 は!?カリフラワー揚げ!?

 てめぇそれはダメだぞ!?


 それは...

 ..."感情を増幅させる薬"?

 うちの目破壊する気か。返して。

 

 ...もうあれこれ10分ぐらい物色してるぞ?

 これ以上何も...今度は何?

 ...目覚まし時計?

 ...目覚まし時計????


 ここって食用品売り場だよな?

 あの...あの?なんで食品売り場に目覚まし時計があるんですか?

「あぁ、それ、パンの形してるじゃないですか。

 本当のパンを使用してるんですよ。」


 ...なるほど。

 ...なるほど!?!?

 

 結局まともな物、なんにもなかったな。

 どうする?公園とか行く?

 行くか。オッケー。


 はぁ...マジで、ツッコミすぎて死ぬかと思った。

 いや、あんな目覚まし時計欲しいか?


 っく...確かに一瞬「あってもいいな...」とか思ったけど!!

 実用性って言葉わかる!?!?


 んまあとりあえず...遠いから、バスに乗らないとな。

 え、バスあったんだって?

 そりゃあるよ。まぁ、たぶん考えてるのとは違うと思うけど。


 これがバスだね。

 言っちゃえば"でかい木箱"みたいな感じだけど。

 公園の最寄りは確か...”大通り2丁目”だったから...


 ...まあ、想像通りって値段だな。

 よし、じゃあ乗るぞ。結構揺れるから気をつけてな。


 ほら、結構乗り心地は悪いだろ?

 まぁでも、結構そっちと変わりはしないかな。


 だよな。エンジンで動いてるし、めちゃくちゃ変わってることはないよね。

 よし、ここが大通り2丁目だな。


 ...さてと。ここが公園だな。スライムもいるぞ。

 ...え、スライム狩ってんのにスライムと戯れるのかって?

 いや、牛だって肉牛があれば闘牛とかもあるじゃん。

 あれみたいなもんさ。多分。


 さて...よいしょ。ちょっとしゃがんで...

 さあ、スライムちゃんたち。こっちに来ておくれ。

 ...


 手に乗らないどころか、寄ってきてすらくれないぞ。

 いつもはしてくれるのに。君もやってみて。

 ...


 え。すげぇそっちに寄るじゃん。なんで?

 うわ、手に乗ってる。うらやましい。

 なんでそっちにだけ...


 うちの目、今何色?

 ...めっちゃ青?ピンクにしたら来るかな。

 なんか言ってみて。

 ...

 ...!?

 あー、えっと。それは...

 あ、でもちょっと寄ってきたぞ。


 お、手に乗ってくれた。

 え、うちの目、すごいオレンジだって?

 いやいや、そんなワケないでしょ。


 ...てか、もうそろ昼食じゃないか?

 どうする?

 ...後で考えればいっか。

 ~つづく~

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