水の怪 

奇奇

水の怪

水は、あの世とこの世を繋げてしまう存在。そこから、地獄へ落ちた者がこの世にまた戻って来ようとする。


二人は、泳いでいた。夜の学校で。


瑞穂は着替え終わると女子更衣室から出て、教室に向かって幸太と歩いた。プールの水に波紋が広がる。


廊下を歩いていると、電気が点いた教室から男女の声が。幸太が教室の扉を開けた。同級生が何人か集まっている。

「どうだった?夜のプールは」

龍介が声をかけてきた。

「悪くないね。こういうのも」

幸太が机に置かれた袋からお菓子を一つ取って食べた。瑞穂が椅子に座る。

「みんなも泳いでくれば良かったのに」

瑞穂が言った。


その後、プールでは、龍介達が泳いでいた。龍介が泳ぎをやめて、周囲を見ると、さっきまで泳いでいたみんながいなくなっている。龍介はプールから上がった。

「おーい!」

龍介の声に返事がない。そして、プールの中に何かいるのに龍介は気付いた。

長い髪・・・・・・

プールの中を泳いで来る。水から伸びてきた手が龍介の足を掴む。プールの中に、龍介は引きずり込まれた。そのあと、全裸で髪の長い女性がプールから出てきた。


教室で瑞穂と幸太は帰りの準備を済ませていた。

「あいつら、遅いな。俺、ちょっと見てくるわ」

幸太はそう言うと、教室を出ていった。


瑞穂は幸太達を見に、廊下を歩いて、プールに向かう。窓から見下ろすと、電気が点いた屋内プールのプールサイドに幸太と他のみんなが立っているのが見えた。瑞穂は急いでそこに向かった。


そこに行くと、瑞穂の他に誰も居ない。さっきまで姿が見えていたみんなが消えていた。瑞穂は辺りを見回す。プールサイドの端に全裸で髪の長い女性が立っていた。全身がびしょ濡れ。全裸の女性は瑞穂にゆっくりと歩いて近付いて来る。寒気を感じた。瑞穂は後退りする。全裸の女性との距離が近くなる。長い髪で隠された顔。風で髪が少し揺れて笑っている口が見えた。瑞穂は次の瞬間、プールに落ちた。服を着ていて上手く泳げない。必死に上がろうとする。瑞穂の横から、全裸の女性が泳いで来る。瑞穂は溺れた。瑞穂の足を女性の手が掴んだ。凄い力で水中の奥へと引っ張られる。そのまま、瑞穂は底へと沈んでいった。(おわり)

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水の怪  奇奇 @Otarun

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