第10話 未来の報告

【管制室ログ/抜粋】


日付:9月15日

記録者:防衛省災害対策局・第七監視班



09:20、祠内部との通信に大幅な遅延を確認。

心拍データは先に届くが、映像と音声は数分遅れて再生される。

ところが同時刻、管制端末には現場から直接転送された“報告書No.10”が表示された。


内容は以下の通り。



【現地報告書 No.10】


提出者:笠原悠人? 斎宮梢?


記載時間:09:35(※管制室時計では未到達の時刻)


記録内容:

「祠の壁が崩落。管制室のモニターから黒い腕が伸び、オペレーターの首を掴む」



監視班全員が凍りついた。

いま読み上げた内容は“未来”の出来事のはずだ。

だが09:35、正確にその光景が起きた。

メインモニターから黒い影が現れ、隣席のオペレーターを床に引きずり込んだ。


残されたのは、真新しい一枚の札だった。

そこには――**「第七監視班、死亡」**と記されていた。



【補足メモ】


・報告書が未来を記述し、その通りの現象が発生。

・提出者欄は曖昧化し、悠人と梢の署名が重なっている。

・区域内部と外部の時間軸が同期せず、むしろ報告書が“時間の主導権”を握っている可能性。



【現場視点/断片】


09:23(悠人の証言)

「おい梢……何を書いてるんだ?」

「……知らない。手が勝手に……」

報告書の余白にはすでに“未来の死”がいくつも並んでいた。



未来が報告によって先に確定し、現実が後追いしている。

では――次に書かれるのは、誰の死か。

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