神様からの授かりもの

リラックス夢土

第1話 神様からの授かりもの



 俺は25歳で結婚した。

 妻も同じ25歳。


 それから10年経っても俺たち夫婦には子供がいない。

 でも俺は気にしてなかった。

 子供は神様からの「授かりもの」だと思っていたから。


 子供がいなくても彼女への俺の愛は変わらない。

 彼女がいれば子供がいないことなど些末なことだ。



 俺はいつもどおりに会社に出勤する。

 妻は専業主婦。



「行ってらっしゃい。あなた」



 このまま何も変わらない幸せな日々が続くと思っていた。



 そしてある日妻に言われた。



「子供ができたの」



 俺は天にも昇るほどの喜びを感じた。

 二人の愛の結晶が産まれる。

 これからは産まれてくる子供のためにももっと働かないといけない。

 やる気を出した俺は以前よりも仕事に打ち込んで頑張った。


 残業が多くても文句は言わない。

 全ては彼女と産まれてくる子供のためだ。



 今日も俺はいつもどおりに出勤したが途中で忘れ物に気付いた。

 それがないと今日の会議ができない。

 俺は慌てて家に戻る。


 すると玄関には俺の靴ではない男物の靴があった。

 そして二階から物音がする。

 俺は静かに物音がする夫婦の寝室に近付いた。


 扉を少しだけ開けて中を確認すると妻と若い男がベッドでお楽しみ中だった。

 俺はそっと扉を閉めた。



 おかしいとは思っていたんだ。

 10年も子供ができなくて急に子供ができるなんて。



 俺は一度会社に出勤していつもどおりの時間に帰宅する。



「お帰りなさい。あなた」



 妻はいつもどおりに笑顔で俺を迎えてくれる。

 そして俺は夕食時に妻に言った。



「なんで10年も経って急に子供ができたんだろうね」


「子供は「授かりもの」だもの。きっと神様が授けてくれたのよ」



 俺は隠し持っていたナイフを取り出した。



「子供を授けてくれた「神様」ってやっぱり「男の神様」なのかな。神様には供物を捧げてお礼をしないとね」



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