第16話 カランの街からの旅立ち

翌朝――カランの街西側の門の外にて。


「えっ、荷馬車を妾たちとの同行のために買ったのかえ?」


目を丸くするリエル。


「基本馬ってランナーバードよりコストかかるからお金に余裕無いと維持するのも大変。だから鳥車や馬車は借りて都市間を移動するのがおおくて……あれ?なんかこの馬たち変では?」


ステラがウチの荷馬車を牽引してる馬2頭を見て首傾げ。


その近くにはリエルたちが乗るそこそこ良さそうな馬車……じゃなくて鳥車があり、そこに繋がれてるのはダチョウ系の体つきした薄茶色の鳥2頭。


なおその鳥2頭はこちらの馬2頭と目を合わせようとしていない。


御者のおじいちゃん(狸系の獣人)も鳥2頭を見て首傾げてる。


「あー、うん。カイトが近くの山奥でテイムした赤毛の馬だよ。普通普通」


「……いや、この特徴的な角はユニ「気のせいじゃないかな?それに赤毛なんて普通の馬しか居ないはずだし」……そ、そうかのう? うーん……」


ユエが渾身のすっとぼけかましてくれて、リエルは踏み込んではいけないのかという理性とコレユニコーンだよな?というツッコミで揺れる所に押し込まれた。


なお当の本人(本馬)はおとなしいものである。


「(コイツゲームでテイムしたモンスターなんだよね。しかも特殊イベントのクリア報酬で手に入るチケットで受けられるクエスト限定で出会えるから、割とレアなヤツ。……つまり他のテイムモンスターもいけるということで……暇な時に確認しよう)」


ユエとオレが召喚したユニコーン(ヴァーミリオン)2頭をなだめながらそう決意する。


「コレ本当に馬ですか?」


「なんかおかしいと思うんですけど……」


「オレが鑑定したら馬とでたし、ユエもそう言ってるから馬のはずだ」


ミレイユやエレスティアのジト目から目をそらす。


「ぐぬぬ、私の鑑定にも馬としか出ない……」


「強いモンスターなら鑑定をごまかすことできると聞いたことありますし、可能性あるのでは?」


「(追加で認識阻害かけておいてっと、)それじゃ、出発しますかね。こっちはそちらについていきます」


「かしこまりました。途中の鉱山都市ナルバスまで――およそ6日を予定です。御者はナルバスを拠点にしているマルスケが担当いたします。どうそよろしくお願いします」


そう告げると御者台に軽やかに飛び乗り、リエルとステラの乗車を待つ。


オレも荷馬車にエレスティアとミレイユ、ついでにユエを放り込んで御者台に座る。


そして二人が車に乗って、ドアを閉じたのを確認したマルスケさん。


「では――出発!」


その声と共に2つの影は太陽から逃げるように、西へと進みだす。


「ナルバスはダンジョンや異界があるみたいだから……楽しみ」


ユエが好奇心を見せながらそう言うので、オレも少し楽しみになってきた――。

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