第11話 夕食とシャワー

 三人は炭火で肉と野菜を焼き、ワインを飲みながら楽しい夕食を始めた。


「このワイン、アルコールは?」

「合法だ。15歳以上なら飲める特殊なアルコールだ。でも飲み過ぎるなよ、それなりに酔うからな」

「やった、初めてだ!」


 たらふく肉や野菜を食べたライラがコルセットを外して、ワインを飲み始めた。


 満足そうな顔で頬は少し酔っているのかピンクに染まっている。

 アレックスがそんなライラを見て苦笑する。


「ライラ、随分食べたな。お腹が少し出ているぞ」

「いいでしょ! お腹空いてたんだから!」


 少し恥ずかしげに、お腹が見えないように横を向くライラ。


「さて、そろそろ片付けて寝るか?」


 キースが言うと、ライラが慌てた様子で訊く。


「あ、あの、キース。お風呂って無いの? 汗を流したいんだけど」

「そんなの無いよ」

「山をなんだと思ってるんだ」とアレックス。


「え、え~? もしかしてこの先ずっとそうなの?」

「もちろんだ」

「だって、汗臭くなるじゃん!」

「なる。でもしょうがない」

「何とかして! そんなの耐えられない」

「俺は耐えられるけどな。死ぬ訳じゃ無し」

「川にでも入るか? もう暗いけどな」

「もうすぐ雨が降ってくるんじゃないか? その時汗流せばいいじゃん」

「嫌! ねえキース、オリゾンでシャワーキット頼めない?」

「う~ん。頼めないこともないけど5万Pか10万Pほどかかるぞ。ぼったくり価格だ」

「それは高すぎる!」


 アレックスがアイデアを出した。


「俺が持っているシートで覆いを作ってやるよ。水はそこらから汲んできて濾過して上から流してやる。どうだ?」

「それがいい! さすがアレックス!」


 なかなかいい案であったがキースが一つ問題点をあげる。


「いいアイデアだが、汚水が流れる。ここは環境保護地域だから排水を何とかしないと」

「私を洗った水はきれいよ!!」


「いや汚いな」

「悪いが汚い」

「ひどい、この男ども!」


 フラフが助言する。


「下にたまるようにしておいて、濾過器で再処理してはどうですか?」

「面倒くさいなあ」

「やって!」


 面倒くさがるアレックスにライラがピシャリと言った。

 アレックスが簡易シャワーボックスを組み立て終わると、それを見たライラが言った。


「なんか、このシート薄くない? 透けて見えるんじゃない?」

「大丈夫だ、ほら」


 アレックスが中に腕を入れて見せた。確かに透けて見えることは無いが、腕のシルエットははっきり見える。


「微妙~、もう少し隠せない?」

「これ以上は無理だ! 我慢しろ」


 本当は布などを掛ければもっと隠せるのだが、アレックスもキースも口をつぐんだ。


 ライラのシャワータイムが始まった。


 アレックスとキースは近くで並んで座ってシルエットを見ている。


「アレックス、やはり女性の毎日のシャワーは必要だな」

「そうだなキース。それには賛成だ」


 歪んだ形だが、3人とも満足した初日の夜であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る