第10話 テント場到着!
散々な川渡りを終えてしばらく歩くとキースがテント場に着いたことを知らせた。
「ここだ。少し開けた平らな場所。テントを張るにはベストだろ」
「やったー! 今日はもう歩かなくていいのね!」
「ああ、そうだ」
「じゃあ、夕ご飯にしようよ!」
「……ライラ、まだだ。まずはテントを張る。それからだ」
「え~?」
キースが背負っていたザックからテントを3人分出す。コンパクトで軽量の一人用だ。
「お前達も組み立てろ」
「もー、分かりました!」
ライラはぶつぶつ言いながら、キースから自分用のテントを受け取った。
そのそばでアレックスはライラに苦笑しながら、すでに黙々と自分の作業を始めている。
「ライラは、ホント食べるのが好きだよな~」
「好きですよ~、こんな山奥、それくらいしか楽しみが無いじゃない」
「景色も良かったし、気分転換になるだろうよ」
「まあ……それはそうだけどね、虫はいるし危険だし!」
山歩きの欠点をあげながらライラもテントを張り始めた。練習をしてきているので特に問題はない。
三つのコンパクトでカラフルなテントが出来上がると、ライラが満面の笑みを浮かべる。
「終わった! それでは?」
「まあ、食事にするか!」
「いえい!」
「食材は? えっと確かアレックスが持ってるよね?」
「ああ、確かここに……」
アレックスが自分のザックを探す。
「あれ、あれ?」
アレックスから冷や汗が出て、青冷めた表情になる。
「どうしたの?」
「な、ない。ザックの底が破けている!」
「それ、本当なの……?」
「アレックス、いきなりやらかしたな!」
フラフが分析した。
「川を渡る時に損傷した模様ですね」
「ぐわああ、ごめん! どうしよう!」
ライラがへなへなと座り込んだ。
「ごはん……」
「魚でも釣るか?」キースの冗談。
「無理でしょー、これからなんて!」
「冗談だ。仕方がない、デリバリーを頼むか」
「デリバリー?」
「ああ、この秘境でも頼めるデリバリーサービスがある。オリゾンだ。かなり高くつくけどな」
「今から頼んですぐ来るの?」
「ああ、基本30分以内だ。無人機で運ばれる」
キースは何やら端末を操作した。デリバリーの発注をしたらしい。
三十分後、ドローンのような機体が到着し食材と飲み物が届いた。
「すごいな、こんな山奥まで」
「ああ、文明の力だ。しかしアレックス。お前に5万ポイントのつけだ。後できっちり支払ってもらうからな」
「5万P? 肉と野菜とこれ何だ、ワインで?」
「そうだ。運賃が高い。市価の十倍になる」
「マジか~」
がっくりと項垂れるアレックスの肩をライラがポンポンと叩く。
「仕方ないよ。こういうこともあるでしょ。山歩きの醍醐味よ」
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