Death人狼② 第三話

 「おはよ」

「ああ。おはよう」

「おはよう!」

みんないる。

(また襲撃がない……⁉ おそろしく慎重派の人狼だ)

一方、連は杏奈が死んだ日から何かが切れたらしい。泣かなくなった。むしろ、元気になっている。そのことが悟をいらいらさせている。

「ねえ、GM」

連が呼びかける。

「何でしょう?」

「いい加減さあ、降りてきたら? 不公平だよ。それと一緒に食堂でご飯食べよ?」

GMは蓮を見下ろす。

「私はすでに朝食を済ませておりますので」

「関係ないでしょ。いいからこっち来てよ」

これまでで、連の性格が分かってきた。どうやら甘やかされて育ってきたらしい。なんでも自分の思い通りになる、と思っている。GMもいい気はしないらしい。目を細めて蓮を見ている。にこにことしているが、目は全く笑っていなかった。

「そもそもGMってさあ、なんでこんなことしてんの? 無意味すぎでしょ。変人だよね。それに、見せたくないのか知らないけど、なんで左手隠してんの? あと、頭悪そうだよね! こんなゲームを考えたやつの気が知れないよ!」

ぺらぺらと離し続ける蓮。目が充血している。正気じゃない。散々言われ、GMの顔からは表情が抜けた。ギロッと殺気のこもった目で蓮を見る。連はびくりと震えた。

「黙れ」

GMがそう言うと、誰も声を出せない。そもそも口が開けない。

(ど、どうなってるんだ⁉)

「その口を閉じろ。それ以上言ったら殺す」

こんなに怒っているGMは見たことがなかった。

(と言っても、GMに会ったのは二回しかないけどな!)

GMは無造作に銃を取り出した。銃口を連に向ける。連はぶんぶんと首を振る。GMは「チッ」と舌打ちをした。パアン! と飛び出た弾は連の頬を掠める。

「次、同じようなことを言ってみろ。次こそ殺す」

そう言ってGMは消えた。

 「……ぶはっ! はあ、はあ……」

悟たちはやっと口を開ける。

「蓮。次からは口を慎め」

真っ青な顔でがくがくとうなずく蓮。

「とりあえずさっさと朝飯を食おう」

その時間は重い空気のままだった。


「……議論の時間です。広間へお集まりください」

気まずそうにGMが言う。

「はあ……早く占い師、出てきてよ」

悟は少し悩んだが出ることにした。重要な手掛かりをつかんでいたからだ。

「俺が占い師だ」

「へえ。誰を占ったの?」

「……俺は蓮を占った。黒だ」

「え……」

連の顔が絶望に染まる。

「じゃあ、投票は連に入れる」

「い、嫌だっ! 嫌だ嫌だ嫌だ! どうして⁉ お前さえ、僕を占わなかったら完璧だったはずなのに!」

恨みがましい目を向ける蓮。悟は目を逸らす。

「嫌だあっ!」

GMは笑って言った。

「ちょうど良かったです。それでは、さようなら」

連に向かって発砲した。何発も。蓮はべしゃ、と音を立てて倒れた。

「人を殺すというのは実に楽しいですね! 肉が! 血が! 飛び出る瞬間はまさに幸せの絶頂! ぜひ皆さんにおすすめしますよ? 興味がある方はお呼びください。私の銃を渡しましょう!」

にこやかに言うGM。そのまま消えていった。

「狂ってんだろ……」

なんとか大樹が言葉を絞りだす。

「とにかくぼくは早く脱出したいから」

望が軽い口調で言うが、その顔は真っ青だった。

「と、とりあえず部屋に戻ろう」

蓮の部屋の扉には×印。

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