どんぐりとばあちゃん
久田井交
どんぐりたべたい
けいたは 5さい。
けいたのゆめは ただひとつ。
――どんぐりを たべること!
ころころ ひかる どんぐりは、
けいたのめには チョコレートみたいに みえます。
でも、そこにたちはだかるのは……
「けいた! またどんぐり くちにいれようとしたでしょ!」
「ち、ちがうよ! これは……おもちゃ!」
「そんなわけあるか!」
そう、てっぺきガードの おばあちゃん。
⸻
あるひ。
「そんなきたないもの たべたら おなかこわすよ!」
「……きたない?」
けいたは まじめに かんがえました。
「じゃあ、きれいにすれば いいんだ!」
つぎのひ。
じゃぶじゃぶじゃぶ!
あわだらけの どんぐり。
「ほら! ぴっかぴか! これで たべられる!」
「けいた!」
おばあちゃんが すぐにとりあげます。
「せんざいであらっても たべられるようには ならないの!」
「えー!? せんざいって なんでも まほうで きれいにするんじゃないの?」
けいたは がっかり。
⸻
でも あきらめません。
よる。
おふろに どんぐりを もってきた けいた。
「おばあちゃん! おふろなら せんざいより きれいになるよ!
いっしょに はいれば ぴっかぴか!」
「けいた……」
おばあちゃんは ためいきをつきました。
「どんぐりはね、そとだけじゃなくて なかも きたないの。
むしや つちが はいってることも あるんだよ」
「な、なかも!?」
けいたは がっくり。
⸻
つぎのひ。
「じゃあ、なかを あらえば いいんだ!」
けいたは いしで どんぐりを ガンッ!
バキーン!
「わああああ! どんぐり ばくだん!」
へやじゅうに ちらばる どんぐりのかけら。
「けいた!」
またもや おばあちゃんの おこごえ。
⸻
けいたが しょんぼりしていると、
おばあちゃんは やさしく ほほえみました。
「じゃあ、いっしょに たべられるほうほう かんがえてみようか」
「ほんと!?」
けいたの めは きらきら。
「むかしね、たべものがなくて どんぐりを たべたことがあるのよ」
「ええええ!? さいしょから おしえてよー!」
⸻
ふたりで どんぐりの したごしらえ。
ゆでて、かわをむいて、みずにさらして。
ながいじかんが かかったけど……
「できた!」
どんぐりクッキーの かんせいです。
けいたは ぱくっ。
「……うん、あんまり おいしくない!」
おばあちゃんは おおわらい。
「でも、いっしょにつくったでしょ? それが いちばん だいじなのよ」
けいたは にっこり。
「やっぱり、どんぐりって たのしいな」
⸻
つぎのあさ。
「おばあちゃーん!」
「なに、けいた」
「まつぼっくりって、どうやったら たべられるの!?」
おばあちゃんは くちをあけて ぽかーん。
でも こころのなかは、ほっこり あたたか。
どんぐりとばあちゃん 久田井交 @majiru_sh
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます