第4話 電車通学
朝、いつもの様に駅で友人たちと合流。
そのまま、いつも通りの電車に乗って学校に向かう。
その日は土日祝日でもないのにやけに空いててさ。
電車に乗った瞬間、
「めっちゃ空いてるじゃん!ラッキー!!」
俺たち四人は誰に咎められるわけでもなく、全員が席に座った。
降りる駅まで15分くらい。
全員が座れたこと以外はいつも通りで、これまたいつも通りのくだらない雑談。
昨日観たYouTubeとか、アイドルの新曲、今日の授業の事…。
本当に何の重要性もないけど自分たちが話してて楽しいだけの会話。
俺は会話の途中でふと、それにしても珍しいな、この時間に人がいないなんて…。
そう改めて思った。
笑いあう友人を余所に、俺は車内を見渡す。
車内に居るのは朝帰りらしい怖そうなおじさん。
大小二つのスーツケースを持った金髪の外国人女性。
幼稚園くらいの子を連れた疲れた顔のおばさん。
たったそれだけの人しかいない。
何となく気になって、いろいろ視線を動かしていて…
そして違和感に気が付いた。
電車の吊り広告。
全て同じものがぶら下がっていたんだ。
朱色っていうのかな?とりあえず赤色の紙。
それには大きな目のマークと巫女のような女性が印刷されていて、その絵に被せる様に大きく『覚』の一文字。
よく見ればどの紙も皺があったり、少しゆがんでた。
物凄く使いまわされている様な…古い感じがした。
見たことのない広告、全部同じ、一体何を広めているのか…俺には全く分からなかった。
相変わらず友人たちは雑談に夢中。
広告には気が付いていない。
俺だけが広告から目が離せなくなっていた。
印刷されている巫女のような女性の視線が気になって仕方ない。
真正面を無表情で見つめるその姿。
まるで大勢に注目されてる様な感覚。
『間もなく○○~、○○~。お降りの方は~…』
車内にいつも通りのアナウンスが流れて、もうすぐ降りる駅なんだとはっとする。
後でXに投稿しようと思った。
この異様な雰囲気の車内を共有したくなった。
足元に置いた鞄からスマホを出して、その広告を撮影しようとカメラを向けかけた時。
思わず、ビクッと体が跳ねて固まってしまった…。
俺たち四人以外の乗客。
その全員がこっちを見ていることに気が付いたんだ。
見かけた場所から移動はしてなかったが…不自然なほど静かに、無表情に、瞬きもせず…。
おじさんも、外国人も、子供におばさんも。
まるで広告に印刷された巫女の表情と同じだと思った…。
全員が、俺たちを凝視している。
鈍感な友人たちに訴えようとした時、電車の扉が開いた。
ダラダラと立ち上がって降り始める友人。
誰も何も気が付いてない。
心臓が物凄い速さで動く音が耳の中で響いてた。
「おい、何してんだ?ドア閉まるぞ!早く出てこい!」
そんな声に慌てて俺も電車を降りた。
何してんだよ~wと、最後に降りてきた俺を待っててくれた1人の友人が笑う。
電車のドアが閉まる寸前のぷしゅーっという音が聞こえた時だった。
「あっ…。」
友人が一言声を出したかと思ったら、俺が降りたのと入れ替わるように閉まりかけたドアをすり抜けて電車に乗り込んでしまった。
制止する暇もなかった。
本当に一瞬の出来事だった。
「え?なんで…?!おい…!!……?!」
友人が乗り込んでしまった、完全に閉まってしまったドアを見て俺は完全に身がすくんだ。
あの不気味な乗客たちが、無表情のまま友人にしがみ付いていたんだ…。
発車のベルの音がして、ゆっくり電車が動き出す。
呆然と友人の姿が見える窓が流れて行く…。
「矢嶋早く行こう!遅刻するぞ!」
その声に弾かれたように俺は動けるようになった。
そして慌てて友人が不気味なやつらと一緒に電車に乗ってしまった事を伝えようとした。
「そっ…そんな事より!!今……!!」
先を行ってた二人の友人、まっきーと博貴に今の出来事を話そうとしてはっとした。
言いかけて止まってしまった俺を見て、戻ってきた二人が心配そうに「どうした?大丈夫か?」と、声をかけてくれた。
混乱しながらも、なぜか話さない方がいいと思った。
「あ…、ごめん、俺の勘違いだわ…ご、ごめん。」
そう言った俺の顔色はかなり悪かったかもしれない。
だって…俺たちは……。
毎朝、同じ駅で合流するメンバーは今いる三人で…電車に乗ったアイツは最初から居なかったんだから…。
その日、俺は友人二人が「さっきの何だったの?」としつこく聞いて来るのを誤魔化しながら学校に向かった。
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