第2話「図書館単純接触効果」~ CUPID β v1.1 図書館偶然遭遇システム~

「心理学部男子がAIの『単純接触効果』でアプローチしたら、図書館ストーカー疑惑に?」




 翌朝、悠真は昨日の「名前3回事件」の後遺症でまだ顔が赤かった。



『CUPID β v1.1にアップデート完了』


『前回失敗の原因分析:宗教的印象回避機能を追加』


『新機能:図書館偶然遭遇システム搭載』




「図書館偶然遭遇って……それもうストーカーじゃないか」




『違います。心理学の「単純接触効果」を活用した科学的アプローチです』




 講義室に入ると、椎名彩花がいつもの席に座っていた。




 今日の彼女は落ち着いた紺色のブラウスを着ている。




 悠真(心の中):「紺色か……心理学的に紺色は知性や冷静さを表す色だな。ということは彩花さん、今日は勉強モード?でも昨日のピンクは母性で、今日は知性……彼女の中でどんな心理的変化が起きてるんだ?まさか俺への印象が『宗教家』から『知的な人』に変わることを期待して?!」




「おはよう、悠真くん♪ 昨日はお疲れさま」




 彩花がくすっと笑いながら挨拶してきた。




 悠真(心の中):「『お疲れさま』って……やっぱり俺のこと、修行僧だと思ってるんじゃ……」




「お、おはよう、椎名さん」




『対象接近確認。v1.1新機能を起動します』


『椎名彩花の本日の感情状態を分析中……』




 画面に彩花の顔認識データが表示される。




『分析結果:リラックス度78%、好奇心指数85%』


『推奨戦略:図書館での「単純接触効果」実行』




 悠真(心の中):「単純接触効果……確かにザイアンス効果とも呼ばれる心理学の基本理論だな。同じ人と何度も会うことで好感度が上がるって……でも『接触』って言葉が気になる……」




『詳細解説:単純接触効果とは、同じ対象と繰り返し接触することで好意が増加する現象です』




 悠真(心の中):「接触って……まさか、肌の接触のこと?!何度も何度も彩花さんと肌を……うわあああ、俺、何考えてるんだ!心理学の『接触』は『出会う』って意味だろ!でも確かに『接触』って言葉は……」




『具体的実行プラン:彼女が借りる本を予測し、同じ本を借りることで自然な遭遇を演出』




 悠真(心の中):「同じ本を借りるって……それって間接キス的な?彼女が触れた本を俺も触るって……ページをめくった指先の感触が残ってるかも……って、また変な妄想してる!」




『彼女の専攻科目から推測:心理学関連書籍の可能性85%』


『図書館での遭遇確率を最大化するため、今すぐ移動してください』




 悠真(心の中):「今すぐって……授業どうするんだよ。でも確かに彩花さん、最近レポートのことで悩んでるって言ってたし、図書館に行く可能性は高い……」




 授業開始5分前。彩花が席を立った。




「ちょっと図書館に寄ってから授業受けるね」




『予測的中。成功確率92%。今すぐ追跡を開始してください』




 悠真(心の中):「追跡って言葉がもうヤバい!ストーカーそのものじゃん!でも……でも心理学的には単純接触効果は実証されてるし……ええい、行くしかない!」




 悠真は慌てて席を立った。




「あ、俺も図書館に……資料があったんだった」




 5分後、大学図書館。




 悠真は書架の陰から彩花の行動を観察していた。




 悠真(心の中):「これ完全にストーカーだろ……でもAIが言うには科学的根拠があるんだよな……」




『ターゲット発見。心理学書籍コーナーにいます』


『彼女が手に取った本:「対人心理学の基礎」』


『作戦実行:同じ本を借りて、自然に話しかけてください』




 悠真(心の中):「同じ本って……図書館に何冊あるんだよその本。まさか彼女が借りた後に『すみません、その本貸してください』って言うの?それ完全にアウトだろ!」




『心配無用。同じ本が3冊あります。自然にアプローチ可能です』




 悠真は恐る恐る心理学書籍コーナーに向かった。




 彩花が本を読んでいる。




 悠真(心の中):「近い!近すぎる!このまま話しかけたら、完全に『尾行してました』ってバレる……どうする?」




『推奨セリフ:「あ、偶然ですね。僕もその本を探してたんです」』




 悠真(心の中):「偶然って……こんな偶然があるかよ!彼女だって『なんで私と同じ本?』って思うだろ!でも他に方法がない……」




「あ、偶然ですね。僕もその本を……」




 彩花が振り返った。




「え? 悠真くん? なんで図書館に?」




 悠真(心の中):「やばい、完全に不審がられてる!なんて答える?『AIが図書館に行けって言ったから』?そんなこと言えるか!」




「あ、えーと……レポートの資料が……」




「もしかして、私を追いかけてきた?」




 彩花がにやりと笑った。




 悠真(心の中):「うわああああ!バレた!完全にバレた!これで俺の大学生活終了!明日から『ストーカー悠真』って呼ばれる!」




「い、いえ!そんなんじゃ……」




「冗談よ♪ でも、本当に偶然ね」




『緊急事態:会話が予想外の方向に進んでいます』


『新戦略:「偶然の一致」を心理学的に説明してください』




 悠真(心の中):「心理学的に説明って……『実は僕たちは運命で結ばれてるんです』とか言うの?それもう告白じゃん!」




『推奨説明:「同期性の心理学について」語ってください』




 悠真(心の中):「同期性って……ユングの理論?でもそれ話したら完全にオタクじゃん……でも他に方法が……」




「実は、心理学にはシンクロニシティって概念があって……」




「わあ、すごい!詳しいのね♪」




 彩花が目を輝かせた。




 悠真(心の中):「え?喜んでくれてる?ということは作戦成功?でもこれ、本当に偶然なのか、AIの計算なのか、もうわからない……」




『分析:対象の興味レベル上昇中。単純接触効果、予想以上の効果を確認』




「じゃあ、一緒に勉強する?」




 彩花が提案した。




 悠真(心の中):「一緒に勉強!?これってもしかして、デート的な?!単純接触効果、すげー!AIありがとう!」




『警告:調子に乗りすぎです。慎重に行動してください』




 悠真(心の中):「AIに『調子に乗りすぎ』って注意された……機械のくせに人間味ある……」




『次回v1.2では「猫耳動物心理学システム」を搭載予定です』




 二人は図書館の机に向かい合って座った。




 悠真(心の中):「これって……これってもしかして初デート?図書館デートって、なんか知的で良いかも……」




 でも、彩花の真剣に勉強する横顔を見て、悠真は思った。




 悠真(心の中):「AIのおかげで彼女と一緒にいられるけど……本当に俺を好きになってくれるのかな……」




『分析継続中。現在の好感度:45%(+12%上昇)』




 まだまだ先は長そうだった。





 💡 第2話の心理学ネタ


 - 単純接触効果(ザイアンス効果): 繰り返し接触で好感度上昇


 - 色彩心理学: 紺色=知性・冷静さ


 - シンクロニシティ: ユングの同期性理論


 - 対人心理学: 人間関係の心理的メカニズム




 🎭 次話予告


 第3話「CUPID β v1.2 動物心理学システム」- 今度は「猫耳動物心理学」で大失敗?どんな展開になるのかお楽しみに!

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