第24話 ポーション1000個作ってみた

 二日後、僕はミカン君と共にダンジョン監視センターへやって来ていた。クウコは神社で留守番だ。彼女が神社に居たいと言うので、そこに住んでもらうことになった。掃除とかしてもらって、助かっているとはミカン君の言葉だ。それは良いことだと思う。今度、僕も掃除を手伝おう。


 監視センターの受付へ向かいながら、緊張する。アポは取ってあるし、作ってきたポーションの質は、うちの女神様、ミネルヴァから太鼓判を押されている。だから、問題は無いはずなのだけれど、変にドキドキしてしまう。


 やがて受付の前に立ち、僕たちはアポを取っているムネを伝える。受付嬢さんに案内され、ポーションを作成するための部屋に通される。見た感じ理科の実験室みたいな感じ。部屋の横には倉庫があるとのことで都合が良い。


「……すいません。僕たち、すでにポーションを作ってきているんです。もちろん、追加で作ることもできます」


 僕の言葉に受付嬢さんは感心したような表情を見せた。そういう顔を見せてもらえるのは、素直に嬉しい。


「ポーションはあればあるだけ助かります。それで、そのポーションは、鞄の中に入れているのですか?」

「ええ、鞄の中です」

「分かりました。では、そちらを机の上に」

「了解です。まずは一ケース……よっこいしょっと!」


 僕は鞄から出したケースを部屋の机に置いた。ざっと一ケース二十本のポーション瓶だ。これを五百ケース分用意してある。流石に五百個もケースの形で用意はできなかったので、すぐダンボールに登場してもらうことにはなった。ほんとはかっこつけたかったんだけどね。


 僕とミカン君の二人でどんどんケースやダンボール箱を出していく。その中には、ポーションの瓶がたくさん。それを見ていた受付嬢さんが「一旦ストップ! ストップしてください!」と、焦っている様子だったので動きを止める。


 な、何か、やらかしたか!? 変に汗が流れるのを感じる。そう思っていると、受付嬢さんが困惑と呆れの混じったような顔で言う。


「ひとまず、ポーションが全部でいくつあるのか教えてください」

「……了解です。鞄にポーションは千個入ってます」

「せ、千個……」


 とりあえず、ポーションは千個作ってきた。これだけあれば、流石に足らないということは無いだろうと思ったからだ。ミカン君もそうした方が良いと言っていた。ただ、彼のことだから受付嬢さんを驚かせたい気持ちもあったのだろう。そこについて、僕からは何も言わない。


 実際、アイテム研究部として、誰の目から見ても明らかな功績を作るという目標がある以上、僕たちのやることにはインパクトが必要だ。僕たちのやることを周囲に強くアピールするひつようがあるってわけ。だから、多少オーバーなことをやるのは許してほしい。


「……分かりました。その話の通りなら、監視センターとしても助かります……追加で作ることはできますか?」

「ええ、水があればいくらでも」

「水があれば……水だけで……?」

「はい、水だけあればポーションはいくらでも作れます」


 受付嬢さんが、コイツマジか……と言いたそうに僕を見ている。彼女からしたら嘘みたいな話でも実際に、多くのポーションを持ってこられてしまうと、否定はしきれない。といったところか。信じてもらえると助かります。


「……ポーションがあって、困ることはありません。こちらは、あなたたちが、ポーションを作るために必要なものは可能な限り用意します。報酬も、払います」


 受付嬢さんの言葉に反応するように、ミカン君が前に出る。ダンボール箱を持ったままで重くないのかな? 僕の心配は、必要ないだろうか?

 

「ありがとうございます。ボクたちとしても、ダンジョン監視センターに協力したい。【a-24】のダンジョンが大変な時ですからね。ただ……」

「ただ……?」


 怪訝そうな顔の受付嬢さんに対して、ミカン君は臆していない。こういう交渉のタイミングで、彼はとても頼もしい。それは僕には、なかなかできないことだ。


「ちょっとだけ、ボクたちのやったことをそのまま宣伝してもらいたいんです。ボクたちがポーション千個を監視センターに提供したと、それだけ約束をしてもらいたいんですよ」

「なるほど……私の一存で決めることはできませんが……」


 受付嬢さんは頷く。その反応を見ても、悪い結果にはならない気がする。


「……私から、上司には伝えておきましょう。今は、それしか約束できませんが……構いませんか?」

「ええ、構いません。ありがとうございます」


 ここへ来る前、ミカン君は言っていた。監視センターの側としても、優秀な冒険者や貴重なスキルを持つ人物とは仲良くしておきたいはずだと。だから交渉はきっと上手くいくと。どうやら彼の言葉を信じて良さそうだ。今はそのことに安心している。


「……では、ポーションはここに出しておいてください。人を呼んで、倉庫へ運ばせます」

「どうも、助かります……良かったね! ハザマ君!」


 ミカン君の言葉にボクは頷いて応えた。今日は、ポーションを納品して、さらに追加分を作る。近いうちに起こるであろうゴブリン軍団の討伐に向けてできることをするのだ。可能な限り、今回のことで活躍してアイテム研究部の功績にさせてもらうぞ!


 エイエイオー! だ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る