第23話 作戦会議
その日の夕方、僕たちは大学から神社へと移動していた。昼にあった老神さんとの一悶着にハラハラしたりもしたけど、今はひとまず落ち着いている。
「……ハザマ君。老神さんへのお願いは、本当にあれで良かったの? 彼女、あれでも世界的大企業の子だし、もっと欲張ったって良かったんじゃない?」
「そうは言われてもね。今欲しいものを言ったんだし、あんまり欲張るのもな。それで、向こうも勝負に勝った時の条件を増やしてくるかもだし」
「それもそうだ」
そんな話をしているうちに、僕たちはソラキツネ神社へ到着した。何度来ても、立派な神社だと感じる。
境内に入ってから、ほどなくして、クウコの姿を発見した。巫女服を着ていて、凄く似合っている。可愛い。
「ハザマさん、ミカンさん、お帰りなさい」
クウコが嬉しそうに手を振ってくるので、僕たちも手を振って応える。ちょっとしたやりとりに、僕も嬉しくなる。
「私、大人しく留守番してましたよ。お爺さんが、あられをくれたんです。ハザマさんたちも食べますか?」
あられ、美味しそうだね。だけど……キツネって、あられをあげても大丈夫なんだろうか? クウコはただのキツネではないから問題ないのかな?
「……あられ、いただいても良いのかな? ミカン君」
「かまわないよ。それじゃ、あられでも食べながら作戦会議といこうか」
場所を移し、畳部屋へ移動する。ここ、たしか前に僕が寝かされてた部屋だな。なんというか居心地の良さを感じる。実家のような安心感とでもいうのか……他人の家にそれを感じるのはちょっと変か?
テーブルを囲み、僕、ミカン君とクウコで座る。さて、会議を始めるわけだが、良い結論が出ると良いな。
「話し合いを始めるよ。議題は、僕たちの部活動で何をすれば老神さんたちの認めるような結果になるか」
僕の言葉にミカン君が頷く。この議題、僕には難しいもののように思える。厄介な。
「問題は、まず老神さんや彼女の取り巻きは絶対に敗けを認めないだろうってことだね。僕たちが少しくらいの結果を出しても、それは結果としては認められないだろう」
「だね。そこは、ハザマ君の言う通り。だからこそボクたちの活動で結果を示すべき相手は、老神さんじゃない」
そうなんだよね。だからこそ、誰に結果を示せば良いのか、という問題になってくる。これは厄介なことなんじゃないかと僕は思うんだけど、ミカン君の表情には余裕な感じがある。
その表情、何か良い考えがあるって受け取って良いんだよね? 僕はミカン君のことを信頼しているからね。
「ハザマ君。ボクたちには心強い見方がいる。配信のリスナーさんたちだ。この前スターライトの三人を助けたことによって、僕たちの知名度はぐんと伸びている。もちろん、第一層を早期に攻略したことも大きい。そのおかげで、視聴者がたくさん居るんだ」
「それは、確かに。そうだろうね」
「うん。けれど、それだけじゃ、まだ足りないかもしれない。そこで、これだ」
ミカン君はスマホを操作して、とある画面を僕に見せてくれた。そこにはダンジョン監視センターがポーションの生成できる人間を求めていることが書かれていた。ほお、ポーションをね……つまり、僕の活躍の場ということかな。そうだったら……こいつはかなり、良い話じゃん!
「ハザマ君にぴったりの募集だろ? 本来は薬師とかを想定してるってことなんだろうけど、向こうはすぐにポーションが欲しいだろうからね。薬師以外のジョブでもポーションが作れるなら歓迎されると思うよ」
「なるほどね。これ、向こうで作業する必要かあるのかな。作業場を用意するって書いてあるけど」
「ハザマ君、大切なのは監視センターが大量のポーションを欲してるってことだ。君はマジックバッグを持っているし、大量のポーションも短期間で作れる。それをいっぱい持っていって、納めてくるだけでも感謝されるってもんだよ」
「そうかな……うん、そうだね」
ミカン君の言いたいことが僕にも掴めてきたぞ。つまり、監視センターに恩を売ろうって訳だ。それはナイスアイデアだと思う。
「……ハザマ君には、ちょっと大変なことを任せちゃうけどさ……ポーションの瓶を千個も持っていけば、これは監視センターへの貢献として、向こうも認めてくれるんじゃないかな」
「瓶千個……それは結構な数だね」
「ポーションを作るだけなら、金ダライいっぱいの水を一気にポーションへ変えても良いと思う。まあ、その後結局瓶に詰めるんだけど」
「瓶詰めくらい苦じゃないよ。問題は、金ダライや瓶だけど……」
「そこは僕たちの助手に頼んであるよ」
ミカン君はそう言って、視線をクウコに向けた。クウコは「万事問題ありません」と言って胸をポンと叩く。今は二人がとても頼もしく見えた。
「神社の倉から、水を居れるための瓶や器を可能な限り持ち出しました。ちゃんと綺麗にしてありますよ」
「……というわけ。これはハザマ君のスキルを前提にした計画だけど、了承をもらえるかい?」
了承だって? そんなの、決まってる!
「そんなの、良いに決まってるじゃん! 最高だよ! 二人とも」
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