第22話 研究部設立!

 ダンジョンアイテム研究部設立の申請は驚くほど簡単に通ってしまった。まさか、なんのトラブルも起きないなんて……絶対になんらかの一悶着が起こると思ってたんだけどね。まあ、良きことかな。


 大学の職員さんに案内してもらった部室はあまり広くはない。たぶん、ミカン君のところの倉の方が大きい。なんて、比べることに意味は無いのに僕は何考えてるんだか。


 とりあえず、今この部室にはエアコンとロッカーくらいしかないみたいだ。むしろ、それがあるだけ上等か。物は、少しずつ増やしていくとしよう。


 ミカン君が僕の前に出て、その場でくるりと回った。舞を踊っているみたいで綺麗だと感じる。彼は僕に向かって嬉しそうな笑みを浮かべながら言う。


「ハザマ君、ここがボクたちの前線基地だ」

「そうだね。しっかり活用していこう」

「そうだね。色んなことができそうでワクワクしちゃう!」


 ミカン君は本当に楽しそう。僕もそんな気持ちだ。なんというか、秘密基地ができたみたいな嬉しさがあるね。


 そんな僕たちの部室へと、いきなり入ってくる者が居た。あまりに、いきなり扉が開かれたものだから、驚いてしまう。部室の入り口へ目を向けると、そこには僕たちがよく知る女の子が立っている。


「オーホッホッホ! ごきげんよう、お二方。話に聞きましたわよ。新しい部を作ったんですって?」


 おお、生のお嬢様だ。というか、老神さん、こんなところに何の用だろうか? なんだか嫌な予感がする。なんて、思っていると


「えっと、何の要ですかね。老神さん。またボクを勧誘にでも来たのかい? 何度来たって答えはノーだよ」


 ミカン君が、僕の言いたかったことをだいたい言ってくれた。こういう時の彼はとても頼りになる。


 老神さんは「それもありますが……」と言った後、こちらにビシッと指を向けてきた。その指を向けてくる動作、なんか嫌だなあ。


「あなたたち! たった二人で部を作ったと聞きましたわよ? たった二人で!」


 ……えっと、それって何か問題? 不思議に思っていると、老神さんは勝ち誇ったように笑う。なんだコイツ。


「あなたたち! ソラキツネ大学で、部を設立する際のルールを知りませんの? 新たな部を作るには五人以上の部員が必要! つまり、あなたたちが作ったこの部はルール違反というわけですわー!」


 そ、そうなの!? もしかして僕たち、かなり分が悪い状況なの? 不安に思っていると、今度は、ミカン君が高らかに笑いだした。


「ハッハッハ! 老神さん、面白いことを言うね!」

「な、何が可笑しいんですの!? ミカンさん!」

「ボクたちはちゃんとルールを守っているよ。そもそも、ルール違反をしているなら部の新設が認められるわけがないじゃないか」

「な、ぬぁんですってぇ!? で、でもあなたたちは二人しか居ないではありませんか?」

「そうだね。ボクたちは二人しか居ない。だけど、新設な学生さんたちが名前を貸してくれてね。彼女たちは普段スターライトってグループで配信活動をしてる。彼女たちは忙しいからね」


 スターライト……あ、ああ! この前助けた三人か。彼女たちこの大学の生徒だったんだね。いやあ、世間は狭いなあ。名前を貸してくれた、ということは、実際に部へ来ることは少ないのか? なんにせよ、ありがとう。


「それは……幽霊部員では、ありませんの?」

「見方によっては、そうかもしれない」

「そ、そんなの認めませんわ! 実質二人しか活動していない部活だなんて……」

「でも、大学の事務員さんはこれを認めてくれた。ボクたちはちゃんとした手続きをして、これが認められてるんだ」

「だとしても、ですわ! この部活は我々の部に、統合されるべきです。ダンジョン活動をするための部はこの大学に二つと必要ありませぇん!」


 ミカン君と老神さんが言い合っている。僕は二人のやり取りを黙って聞いている。僕が変に口を出したりしない方が良いように思えるのだ。


「……埒が明きませんわね。まあ、わたくしも、部がちゃんとした実績を上げているのなら、文句は言わないのです」

「実績ね……この前の第一層攻略じゃあ足りないかな?」

「あれは、部とは関係の無い活動でしょう? この部の実績としての活躍を示しなさいと、言っているのですわ!」

「ふぅん? 部としての実績があれば良いわけだ」

「そ、そうですわよ。この部としての実績があれば、我々はダンジョンアイテム研究部の存在を認めます」


 その時、ミカン君がニヤリと笑った。何かよからぬことを考えていそうだ。彼のことだから、僕たちのメリットを考えてくれていると期待したい。

 

「じゃあ、勝負しようよ。今月中にボクたちの部がなんらかの結果を残せなかったら、部を解体する」

「……へえ、面白いですわね。その勝負、乗ってあげますわよ」

「お、今の言葉、間違いないね? 言質を取ったよ。ところで……」

「ところで? なんですの?」

「ボクたちだけ、勝負に負けた時のデメリットを負うのは、公平じゃないよね?」


 ミカン君、勝負に自信はあるだろうけれど、老神さんから何を奪おうってのさ。そう考えていると、彼がこちらを見た。も、もしかして僕がそれを決めるの!?


「ハザマ君、君は何が良いと思う?」

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