第21話 ダンジョンアイテム研究部

 ソラキツネ大学。その学食で、僕はミカン君と共にうどんを食べていた。というか、彼と大学でバッタリと出会った時には驚いた。同じ大学でも意外と気がつかないもんだね。


「……というかクウコちゃんはどうしたのさ?」

「流石にキツネちゃんを大学まで連れてくるわけにはいかないさ。おっと、今はクウコ様かな? なんにせよ。今はうちでくつろいでもらってる」

「クウコ様ね……思ったんだけど。僕は気絶するほどの魔力を持っていかれたわけじゃん? 土地神様の名前でも魔力ってめちゃくちゃ吸われるんだね~。びっくりだよ」


 僕の言葉に対し、ミカン君は……コイツまじか……とでも言いたげな呆れ顔になっていた。そ、そんなに呆れられるようなこと言ったかな? へこんじゃいますよ?

 

「土地神様というか、空の狐と書いてクウコと読む。この名前は、妖狐の中でも最上位のものだよ。そりゃ大量の魔力を持っていかれるよ」

「そういうもんなの?」

「そういうもんなの!」


 ミカン君に力説されると、そういうものだと受け入れるしかなさそうだ。彼の家でまた気絶したことは本当に悪いと思っている。それはそれとして、気になることがあった。


「……妖狐の中でも最上位って言ってたけど、彼女には多くの尻尾は無かったように思う。上位の妖狐ってたくさんの尻尾を持っているんじゃないかな?」

「あーね」


 さっきまでは呆れ顔だったミカン君だが、今の彼はそんなことも知らないの~? と言いたそうに、口許を緩めている。そんな表情さえ可愛く見えるのだから美人ってずるい。男なのに。


「妖狐ってのは上位のものほど尻尾が増えていくって思われてるかもしれないけど、それは半分正解の半分不正解」

「と、いうと?」

「妖狐の尻尾は一定数まで増えると、その後は減っていくんだ。空狐ってのは妖狐の最上位で、尻尾は持たないんだな。これが」

「へえ~。ミカン君博識じゃん!」

「よせやい。照れちゃうもの」


 まんざらでもなく嬉しそうなミカン君だったが「ところで」と真面目な顔になる。お、何の話かな? 先日からネットで話題になってる【a-24】のゴブリン騒ぎについてだろうか? あれは僕も結構気になってたんだよね。


「ハザマ君……ボクたちで部活作っちゃわない?」

「部活……?」


 それはまた、どういう風の吹きまわしで? まずは彼の話を聞いてみて、それから、どうするかを考えるとしようか。


「とりあえず、話を聞かせてよ」

「うん、任された」


 僕がその話を聞く姿勢を見せたからか、ミカン君は嬉しそうに笑う。彼と出会ってから、それほど多くの時は流れてないけど、お互いの信頼関係みたいなものが感じられる。だからか、僕も嬉しい。


「ここ、ソラキツネ大学なんだけど、ダンジョンのすぐ近くだろ? うちの神社や君が住んでるって話してた地域よりもずっと近い」

「僕が住んでるのは市内ではあるけどね。ここからダンジョンに通えるなら、その方がずっと近い」

「ということでさ。この学内にボクたちの前線基地を作らないかって話だよ。僕たちのダンジョン探索のための道具なんかが置けるとなお良いね」

「それは……良い考えかもしれないな」

「でしょー」


 僕のマジックバッグも無限に物が入るわけではない……と、うちの女神様、ミネルヴァは言っていた。なら、物置があれば助かるのは確かだ。ミカン君ちの神社を借りるなんて手もあるかもしれないけど、物置がダンジョンにより近いなら、より便利だ。


「で、部室を作るとして……部の名前はどうする? 活動内容なんかも、ちゃんと考えておかないと部を設立する許可はもらえないじゃん?」


 その辺のことを考えるのは僕苦手なんだよね。美味い理由が思い付けば良いんだけど、なんて考えているとミカン君が不適に笑った。そして彼は自身の胸をポンと叩き「このミカン君に任せておきなさい」と言う。なんだか、凄く頼もしい。


「そこら辺のことは、考えてあるともさ! というわけで、勝手ながら部室の名前を考えてきました! ハザマクンに変わって命名させてもらうよ!」

「まだ部は出来てないけどね」

「作るときに必要なんです~。てなわけで」


 ミカン君は「コホン」と、わざとらしい咳払いをした。もったいぶるなあ。焦らさないで早く教えて欲しい。こっちは気になってるんだから。


「発表です。ボクたちの部は……ダンジョンアイテム研究部! です! ジャジャーン!」

「ダンジョンアイテム研究部? 聞いたことない部活だね?」

「そりゃそうだよ。ボクたちで新しく作る部活なんだから」


 へえ。さらに興味が出てきたぞ。


「どんな活動内容か、教えてよ」

「名前の通りの部だよ、ハザマ君。ダンジョンで手に入るアイテムの研究……どんな使い道があるか……とかより良い使用法なんかを考える……ってのは表向きの話で」

「……裏ではどんなことをするっての」

「まあ、さっき言った通りダンジョン探索の前線基地だね。でも、その理由だと、すでに老神迷宮探索部が存在するだよねぇ」


 老神……! ここで、その名前が出てくるのか。僕がいかに学内のことに視野を広げてないかが分かるな。まだ四年は過ごす大学だし、もっと色々積極的に知っていこう。


「……というわけで、この後にでも部活動の申請に行ってみよー! もしかしたら、今日にでも部を設立できるかもだ!」

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