第26話 銀色の閃光と天啓の力
商業都市カーライルを後にし、ミスリルの山脈へ向かう道中、一行は夜営のため、街道から少し入った森で火を囲んでいた。ライナスは、早速この機会を逃すまいと、イアンに剣を突きつけた。
「イアン! お前は、食事の前に私と訓練だ! 勇者は常に心身を鍛えねばならん! まずはランドール王家に伝わる由緒正しきランドール王室剣術の構えから教え込んでやろう!」
ライナスは、片手を胸に、伝説の剣を天に突き立てるという、豪快だが実戦では隙だらけで使い物にならなそうな構えをとった。
イアンは冷めた目でライナスを一瞥しながら、食事に手を付けようとしていた。
「そんな無駄に大げさな構え、実戦で使えるわけないだろ? 敵を目の前にして、一瞬でも隙を作ったら死ぬぞ。騎士団ごっこは、王宮の演習場でやってろよ」
「な、なんだと!?」
ライナスは顔を真っ赤にして激昂したが、イアンはそれ以上何も言わず、無愛想にパンをかじり続けた。ライナスの「熱血指導」は、イアンの「現実的なツッコミ」により、初っ端から跳ね返されたのだった。
レイリアは、スージーから手渡された紅茶を優雅に飲みながら、その様子を冷静に観察していた。
翌日の昼下がり、一行がミスリルの山脈の麓に近づいたその時だった。
「皆様、注意してください。魔物が接近しております」
スージーが警告すると、道端の岩陰から、全身岩でできた魔物、ゴーレムが二体、ノッシノッシと現れた。
「皆下がれ! ここは私の出番だ! イアンにランドール王室剣術がどのようなものか、教えてやろうではないか!」
ライナスは伝説の剣を引き抜き、「伝説の剣よ、その力を示せ!」と叫びながら、剣身から炎を噴き出しながら前へ躍り出ようとした。その時、後ろからイアンの声が飛んだ。
「待て。邪魔だ」
「なっ!?」
ライナスが振り返る間もなく、イアンはライナスの肩をぐっと掴むと後ろに引っ込めた。
「よく見ておけ、王子様。今から俺の力を見せてやる」
イアンは、右手に持った剣を、その手を左胸の前に掲げるように構えた。すると、彼の左胸の十字の聖痕が、まるで命を得たかのように銀色に強く輝き始めた。その輝きは、イアンの腕を伝い、剣の刀身へと移り、剣全体を銀色の光で包み込んだ。
銀色の輝きを放つ剣を握りしめたイアンは、無表情のまま魔物に向かって一閃した。
ズバァァン!
鋭い銀色の光の刃が、音もなく空気を切り裂き、岩石系の魔物二体を、まるで豆腐のように瞬時に真っ二つに切り裂いた。
二体の岩でできたゴーレムは両断され、ドサリと音を立てて崩れ落ちた。イアンの剣には、血も埃も一切ついていなかった。
ライナスは、目の前で起きたあまりにも圧倒的な光景に、炎をまとった剣を持ったまま立ち尽くした。
「な、なんだその剣は!? まさかその剣も私の剣と同じような、伝説の剣なのか……!」
イアンは、銀色の輝きが消え、普通の剣に戻ったのを確認すると、静かに答えた。
「いや、これはそこらの武器屋で買ったただの鋼の剣だ。この剣が纏った銀色に輝く力のことは……正直よくわからない。以前死にそうな目にあったときに、頭の中で力の使い方が急にわかるようになった。多分、これが『天啓』とやらの力なんだろうな」
その言葉に、レイリアの瞳がぱっと輝いた。
(これが、勇者に与えられた『天啓の力』。ライナス様の炎の力とは、全く別の、魂を断ち切るような力……!)
レイリアは、イアンの恐るべき力を目の当たりにし、確信した。
(ライナス様の規格外の炎と、イアン様の天啓の力。全く違う二人の二つの力を、お互いに連携できるようになれば……。私たちの旅は、さらに有利な戦い方ができるようになるに違いないわ!)
レイリアは、ライナスの勘違いを利用し、イアンの力を最大限に引き出すための、新たな策略を練り始めた。
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