第3話 七つの言葉
2025年4月2日 午前6時00分
地下都市の朝は、静かに始まった。
人工照明が少しずつ明るくなり、居住区に朝の訪れを告げる。換気システムの低い唸りと、遠くから聞こえる訓練場の足音。いつもの朝のはずだった。
カイルは司令室のモニター前に立っていた。昨夜はほとんど眠れなかった。アイリスとイリスの統合、セリスからの通信、そして連鎖的に起動し始めた他のZEROシリーズ。すべてが急速すぎて、思考が追いつかない。
「状況報告」
レジスタンスの司令官、ヴァルクが低い声で命じた。45歳の壮年の男は、黒髪をオールバックに整え、鋭い眼光で複数のモニターを睨んでいる。
副官のエランが報告を始めた。28歳の金髪碧眼の青年は、カリスマ性と情熱を併せ持つ、レジスタンスの精神的支柱だった。
「各地で同時多発的に異常現象が発生しています。ここ地下都市でZERO-01とZERO-02が起動、海底都市でZERO-03が覚醒、そして――」
彼は一瞬言葉を切った。
「山岳都市、海上都市からも、謎の信号を検知。恐らく、他のZEROシリーズが」
「全部で七体」
アイリスが静かに言った。彼女は新しい戦闘服に身を包んでいた。黒と白のツートンカラー、体のラインに沿った機能的なデザイン。昨日まで培養槽にいたとは思えない、凛とした姿だった。
『データベースによれば、私たちは元々七体で一組として設計されています』
イリスの論理的な声が続く。
「でも、なぜ今? なぜ同時に?」
その問いに答える者はいなかった。
ヴァルクが重い口を開いた。
「それと、第8層のレオン少佐からの定期連絡が、3時間前から途絶えている」
「レオンが?」
ジークが心配そうに声を上げた。
「あの人が連絡を怠るなんて」
「第8層は封印区域だ。10年前から完全封鎖されている」
ヴァルクが渋い表情で続けた。
「だが、最近になって妙な兆候が報告されていた。封印が弱まっているのか、それとも……」
リサンドラが不安そうに付け加えた。
「レオンさんとノクス博士は親友だったから……きっと何か重要なものを守っているのかも」
「まさか、第8層に何者かが侵入したのか」
エランが推測した。
「もしそうなら、レオン少佐は単独で対応している可能性が高い」
ミリアがティアと共に司令室に入ってきた。彼女もまた眠れなかったようで、目の下にうっすらと隈ができている。
「カイル、大丈夫?」
心配そうに声をかけるが、カイルはモニターを見つめたまま頷くだけだった。
(また、アイリスのことで頭がいっぱいなんだ)
ミリアの胸に、小さな黒い感情が芽生え始めていた。
* * * * *
その時、司令室の空気が変わった。
影が、実体化するように現れた。
「おはよう、諸君」
オルフェルだった。
白金の髪、群青の瞳、片翼の堕天使。昨日と同じ黒いローブだが、よく見ると裾に銀の刺繍が施されている。複雑な紋様は、まるで星座のようにも見えた。
警報が一斉に鳴り響いた。
「侵入者!」
エランが銃を抜いたが、オルフェルは両手を挙げて無害を示した。
「待て。話がある」
「堕天使の話など――」
ヴァルクが言いかけた時、アイリスが前に出た。
「聞きましょう」
『彼の情報は、現状を理解する上で有益です』
二つの声が、冷静に判断を下した。
オルフェルは微笑んだ。それは、どこか寂しげな表情だった。
「賢明だね、アイリス。いや――」
彼は首を傾げた。
「今は二人で一人か。面白い選択だ」
「何を知っている?」
カイルが鋭く問いただした。
「知っていることは多い。3000年生きていれば、嫌でも知識は溜まる」
「3000年!?」
ジークが驚愕した。
「お前、そんなに長生きなのか」
「正確には、3000年と少し。最初の2000年は天使として、そして――」
オルフェルは自分の片翼を見つめた。黒い羽根が、悲しそうに震える。
「あの日から千年、堕天使として」
全員が息を飲んだ。
オルフェルは懐から、古い羊皮紙を取り出した。それは年月を経て黄ばみ、端が擦り切れている。でも、そこに書かれた文字は鮮明だった。
「これを読むといい」
羊皮紙を広げると、そこには詩のような文が書かれていた。
* * * * *
『七つの試練』
第一の試練:孤独を癒すこと
散らばりし七つの光を集め
一人では立てぬ者に手を差し伸べよ
第二の試練:信頼と裏切りを知ること
最も信じる者に疑われ
最も疑う者に信じられよ
第三の試練:完全を否定すること
欠けたる翼を誇りとし
不完全なる美を認めよ
第四の試練:過去からの解放
千の記憶に囚われず
今この瞬間を生きよ
第五の試練:選択の責任を負うこと
全ての道を知りながら
一つの道を選び抜け
第六の試練:真実を受け入れること
世界の残酷さを直視し
それでも希望を捨てるな
第七の試練:愛を定義すること
憎しみの中にも愛を見出し
愛ゆえの狂気を理解せよ
「なんだこれは」
ヴァルクが眉をひそめた。
「ただの詩じゃないか」
オルフェルは首を振った。
「これは予言。そして、アイリスたちが果たすべき使命」
アイリスが羊皮紙を手に取った。触れた瞬間、微かな熱を感じる。
『古い。でも、なぜか新しくも感じる』
イリスが分析した。
「この試練を、私たちが?」
「君たちだけじゃない」
オルフェルはカイルを見た。
「君も含めて、だ」
カイルの左目が激痛を訴えた。一瞬、視界が真っ白になる。その中で、何かが見えた。
自分が倒れている姿。アイリスが泣いている姿。そして――
幼い少年が、檻の中で震えている姿。
「っ!」
カイルがよろめいた。ミリアが慌てて支える。
「カイル! 大丈夫?」
「あ、ああ……」
でも、今見た光景が頭から離れない。あの少年は誰だ? なぜ、あんなに見覚えがある顔をしていた?
* * * * *
オルフェルが指を鳴らした。
パチン、という音と共に、司令室の中央に映像が投影された。立体ホログラムのような、しかしより鮮明な映像。
そこには、天界の光景が映し出されていた。
純白の宮殿、黄金の門、そして――
九体の天使たち。
「第九位階から第一位階まで」
オルフェルが説明を始めた。
「彼女たちは、人類を『管理』することを使命としている」
映像の中で、天使たちが会議をしている様子が映る。その中心には、最も美しく、最も恐ろしい存在がいた。
「第一位階、セラフィエル」
三対六枚の翼を持つ、熾天使。その美貌は人間の理解を超え、その力は他の天使全てを合わせたよりも強大。
「彼女は、ある場所に封印されている」
「封印? 最強の天使が?」
エランが驚いた。
「誰が封印したんだ」
「彼女自身だ」
オルフェルの表情が曇った。
「千年前、彼女は自ら封印を選んだ。理由は……複雑だ」
映像が切り替わった。
今度は、地下都市の最深部、第12層が映し出される。
そこには巨大な水晶があった。高さ10メートルはあろうかという巨大な結晶の中に、一人の女性が眠っている。
透き通るような白い肌、腰まで届く銀色の髪、そして背中の三対六枚の翼は、水晶の中でゆっくりと呼吸するように動いていた。
「第12層に、第一位階のセラフィエルが!?」
リサンドラが息を飲んだ。
「そんな、第12層は最重要封印区域のはず!」
「そう、10年前から立ち入り禁止になっている」
ヴァルクが重い口を開いた。
「理由は、謎の爆発事故だと聞いていたが」
オルフェルは首を振った。
「爆発ではない。セラフィエルの力が、一瞬だけ漏れ出たんだ。その影響で、第12層は聖域となった。もはや通常の空間ではない」
オルフェルの声が重くなる。
「たとえ上位悪魔が立ち入ったとしても、あの圧倒的な力の痕跡だけで逃げ出すだろう。第一位階の力は、他の天使とは次元が違う」
カイルの左目が、また痛んだ。
第12層。その言葉に、なぜか強い既視感がある。まるで、そこに大切な何かがあるような――
* * * * *
「話を戻そう」
オルフェルは映像を消した。
「七つの試練は、セラフィエルが残したもの。これをクリアした者だけが、彼女の封印を解く資格を得る」
「なぜ封印を解く必要が?」
アイリスが聞いた。
「最強の天使を解放したら、人類は――」
「滅びる?」
オルフェルは苦笑した。
「いや、むしろ逆だ。セラフィエルこそが、人類の最後の希望かもしれない」
『論理的に矛盾しています』
イリスが指摘した。
「天使は人類の敵のはず」
「表面的にはね。でも、真実はもっと複雑だ」
オルフェルは自分の片翼を抱き寄せた。黒い羽が、微かに震えている。
「天使も悪魔も、そして人間も、みんな何かに縛られている。その『何か』から解放されるには――」
その時、司令室の通信機が突然反応した。
『こちら……第8層、レオンだ……』
雑音混じりの声が響く。背後では激しい戦闘音が聞こえる。金属がぶつかり合う音、何かが砕ける音。
『第8層で天使と交戦中……ヴェルティナだ……しばらく持ちこたえる……』
「レオンさん!」
ジークが心配そうに声を上げた。
「ヴェルティナだって!? 第五位階の力天使じゃないか!」
リサンドラが小さく呟いた。
「レオンさん……ノクス博士との約束、まだ果たしていないんだから……無事でいて」
カイルが振り返った。
「約束? ノクス博士って父さんと何の?」
「いえ、15年前の話よ。詳しくは知らないけど……」
リサンドラは言葉を濁した。
通信はそこで途切れた。
ヴァルクが冷静に指示を出した。
「封印区域の第8層へ増援は送れない。今は各自の持ち場を死守するしかない」
オルフェルが意味深に呟いた。
「レオン・ハートランド……まだ生きていたのか。15年前のあの約束を、まだ覚えているとは」
その直後、警報が鳴り響いた。
『緊急通信!天使来襲!!』
モニターに、新たな映像が映し出された。
第七位階の天使、権天使プリンシピア。
金髪碧眼、完璧なプロポーション。そして傲慢な笑み。彼女は権力を司る天使で、人間を見下すことで有名だった。
「人間ども、そしてPROJECT_ZEROの失敗作たち」
侮蔑に満ちた声が響いた。
「私からの『贈り物』を用意した」
映像が引いて、プリンシピアの隣に何かが映った。
小さな檻。
その中に――
「シン!」
カイルが叫んだ。
* * * * *
記憶が、堰を切ったように溢れ出した。
3歳の弟。7年前に姉と一緒に連れ去られた、幼い弟。自分が忘れようとしていた、もう一人の家族。
檻の中の少年は、10歳ぐらいに見えた。黒髪で、カイルによく似た顔立ち。痩せていて、服はボロボロだったが、その瞳には強い意志の光があった。
「お兄ちゃん……」
シンが小さく呟いた。音声は届かないはずなのに、その唇の動きではっきりと分かった。
「忘れてた……俺、シンのことを……」
カイルは膝から崩れ落ちた。
なぜ忘れていた? 大切な弟のことを、どうして記憶から消していた?
(守れなかったから)
心の奥底から、声が聞こえた。
(あの日、姉さんと一緒にシンも連れて行かれた。わずか3歳の弟を守れなかった。だから、忘れることで自分を許そうとした)
「カイル……」
アイリスが心配そうに寄り添った。その温もりが、カイルを現実に引き戻す。
プリンシピアが高笑いした。
「思い出したようね。でも遅いわ」
彼女は檻を持ち上げた。
「この子の命が欲しければ、第3層まで来なさい。期限は――そうね、1時間」
「待て!」
「ああ、それと」
プリンシピアは残酷な笑みを浮かべた。
「来るのは、カイルとそのお人形だけ。他の人間が来たら、この子の命は――」
映像が切れた。
司令室に、重い沈黙が流れた。
カイルは左目を押さえた。昨日からずっと疼いている。アイリスの起動、ルクシアとの戦闘、そして今の映像を見ている間にも、無意識に未来を覗いていた。
* * * * *
「罠だ」
ヴァルクが断言した。
「第七位階の天使が、わざわざ人質を取るなんて」
「でも、シンが」
カイルは拳を震わせた。記憶を封印して7年ぶりに思い出した弟。今度こそ、守らなければ。
「行かせてください」
「駄目だ。危険すぎる」
「でも――」
「私も行きます」
アイリスが決然と言った。
『戦力的に、私なら勝率32.7%あります』
イリスが冷静に分析を加える。
「32%じゃ低すぎる」
ジークが頭を掻いた。
「せめて俺たちも――」
「プリンシピアの性格上、脅しは本気でしょう」
オルフェルが口を挟んだ。
「彼女は約束は守る。歪んだ形でだが」
ミリアが震え声で言った。
「カイル、本当に行くの?」
「行くしかない」
カイルは立ち上がった。左目が疼く。でも、それ以上に心が痛い。
弟を7年間も忘れていた罪悪感。
守れなかった後悔。
そして、今度こそという決意。
「俺が行く。アイリスは――」
「一緒に行く」
アイリスは譲らなかった。
「だって、私はそのために生まれたんだから。カイルを守り、共に戦うために」
その言葉に、ミリアの心に黒い感情が膨らんだ。
(また、アイリスが……)
ティアが心配そうにミリアの肩に手を置いた。
「ミリア……」
「大丈夫」
ミリアは無理に笑った。でも、その笑顔は歪んでいた。
* * * * *
準備は簡潔に済ませた。
カイルは軍用ナイフと拳銃を装備。アイリスは特に何も持たない。彼女自身が最強の武器だから。
第3層への通路の前で、皆が見送りに来た。
ゼロがぴょんぴょんと跳ねていた。
「大丈夫! きっとうまくいく!」
「なんでそう思う?」
「だって、1000回失敗しても、1001回目があったもん!」
謎めいた言葉だったが、なぜか勇気づけられた。
ベリスも来ていた。青い瞳に心配の色を浮かべている。
「お姉さん、無理しないで」
「大丈夫。イリスと一緒だから」
『はい、効率的に対処します』
二つの声が、それぞれの決意を示した。
リサンドラが小型の通信機を渡した。
「これで連絡を。何かあったら、すぐに」
「ありがとう」
オルフェルは、少し離れた場所から見守っていた。
「第一の試練は、もう始まっている」
彼は小さく呟いた。
「『孤独を癒す』……か」
カイルとアイリスは、通路の奥へと消えていった。
残された人々は、ただ祈ることしかできなかった。
特にミリアは、複雑な感情を抱えながら、二人の背中を見送った。
(カイル、無事に帰ってきて。そして――)
心の奥で、黒い何かがざわめいた。
(アイリスなんかより、私を見て)
* * * * *
第3層。
昨日ルクシアと戦った場所。今は静寂に包まれている。
瓦礫が散乱し、壁には戦闘の跡が生々しく残っていた。血痕も、まだ乾いていない。
広い空間の中央に、権天使プリンシピアが立っていた。
想像以上に美しく、そして恐ろしい存在だった。身長は2メートル近く、金色のドレスは光そのもので織られているようだった。二枚の白い翼が、優雅に広げられている。
その足元に、檻があった。
「お兄ちゃん!」
シンが檻の中から手を伸ばした。小さな手は傷だらけで、爪は剥がれかけていた。
「シン!」
カイルが駆け寄ろうとした。その瞬間、左目が疼いた。
プリンシピアが手を挙げて制した。
「待ちなさい。まず、ゲームのルールを説明するわ」
「ゲーム?」
「そう、退屈しのぎのゲーム」
プリンシピアは優雅に微笑んだ。それは美しいが、氷のように冷たい笑顔だった。
「ルールは簡単。あなたたちが私を楽しませれば、この子は解放。つまらなければ――」
彼女は檻を軽く蹴った。シンが苦痛の声を上げる。
「やめろ!」
「あら、もう怒ってる? つまらない人間ね」
プリンシピアはアイリスを見た。
「それより、あなたの方が興味深いわ。ZERO-01、でも不完全」
『何が不完全だと?』
イリスが反論した。
「システム稼働率は100%です」
「あら、気づいてないの?」
プリンシピアは嘲笑した。
「あなた、まだ四体足りないでしょう?」
アイリスは黙った。確かに、他のZEROシリーズはまだ確認されていない。
「不完全な人形が、天使に勝てると思って?」
プリンシピアが指を鳴らした。
空間が歪み、重力が変化した。カイルとアイリスの体が、見えない力で地面に押し付けられる。
「ぐっ……」
カイルは必死に立ち上がろうとしたが、体が鉛のように重い。
アイリスも同様だった。通常の10倍の重力。AIの体にも、限界がある。
「第一の試練、『孤独を癒す』」
プリンシピアは朗々と語った。
「あなたたち二人だけで、この状況を打破できる? それとも――」
彼女は残酷に微笑んだ。
「仲間を呼ぶ? でも、それをしたらこの子は――」
シンが震え声で言った。
「お兄ちゃん、大丈夫……僕、我慢できるから……」
その健気な姿に、カイルの心が張り裂けそうになった。
* * * * *
その時、アイリスが動いた。
重力に逆らい、ゆっくりと立ち上がる。その体からは、微かな光が漏れ始めていた。
「私は、独りじゃない」
『二人でもありません』
二つの声が重なる。そして――
新たな声が加わった。
『お姉ちゃん、力を貸すよ!』
それは、ZERO-02 ベリスの声だった。
通信機から? いや、違う。アイリスの中から聞こえてくる。
『みんな、いるもん!』
ZERO-03 セリスの声が続く。
さらに、別の声も聞こえてきた。
『ZERO-04、デリス、接続します』
『ZERO-05、エリス、同期開始』
『ZERO-06、フェリス、リンク確立』
そして、最後に低く響く声。
『ZERO-07、ガリス……繋がる』
アイリスの体が、七色の光に包まれた。
紫、青、水色、緑、黄、橙、赤。
七つの光が螺旋を描きながら、一つに収束していく。
「まさか……遠隔統合!?」
プリンシピアが初めて驚愕の表情を見せた。
「不可能よ! 物理的に離れたAIが統合なんて!」
でも、それは確かに起きていた。
アイリスの銀髪に、七色のメッシュが走る。瞳も、紫から虹色へと変化していく。
「私たちは七人で一人」
七つの声が、完璧にハモった。
「離れていても、繋がっている。それが――」
アイリスは重力を振り切って、完全に立ち上がった。
「孤独じゃない、ということ」
カイルも、その光に触れて、体が軽くなった。
プリンシピアの表情が、初めて動揺した。完璧な美貌に、わずかな亀裂が走ったように見えた。
「まさか……遠隔統合が成功するなんて」
アイリスが一歩前に出た。七色の瞳が、決意に満ちている。
「第一の試練『孤独を癒す』――私たちはもう、独りじゃない」
プリンシピアが身構えた。二枚の翼が、ゆっくりと広がり始める。
「面白いわ。では、本気で相手をしてあげる」
空気が震えた。本当の戦いが、今始まろうとしていた。
第3話 完
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