大天使帝国物語

あかつき

序章

第1話世界は終わりを迎えた

 2025年 九月



《地球の直線上に惑星が誕生して早100年が経とうとしています。》

《これって衝突とかしないですよね?》

《やっぱり怖いですよね。そこで今回は、天文物理学者である…》


「ねーえー!私の貴重な朝の時間を無駄にしないでくれるかなぁー?引きニートさぁーん?」

「聞いてんのー?おーい」


《あの惑星はとても奇妙な惑星です。他の惑星とは全くの別物とみていいでしょう…》

《この100年、全く動く様子が見られなくて…》

《大きさってどのくらいなんでしょうか?》

《地球の半分でしょ?俺聞いたことありますよ!》


「おかあさーん!ニートが部屋に戻るように説得してよ!アイツがいると学校に行く前にテンション下がるんだけど!」



《衝突したら世界破滅しちゃいますね》



「…」

「何またこのニュース?」

「あぁ。」

「こんなん見てる暇あるなら仕事探せ!」

「そうだな」

「あーはいはいわかった探す気ないのね。おかあさん学校行ってきまーす!」


 返事は帰ってこなかった。

 いつからだろう。双葉が俺を“お兄ちゃん”と呼ばなくなったのは。昔はかなり仲良かったんだけどなぁ。

 さて、撮り溜めてたアニメでも見ますか…。


《ここで速報が入ってきました。えー現在惑星が地球に向かって、え?衝突?》

《は?何言ってんのドッキリ?》

《繰り返します。現在地球に100年動かなかった惑星が近づいて来ています。衝突時間は、残り10分を切りました!!》


 …こう言うのって、漫画でしか見たことがなかった。死ぬのか?俺?

 こういうときって何をすればいいんだ?最後の晩餐とか?

 あー死ぬまでに童貞は卒業しときたかったなぁ………


「双葉!!!」


 慌てて家を飛び出す。世界破滅まで残り数分。何をしたって捕まらない無法地帯と化した日本…野郎どもの考えは一つしかない。

 ______双葉が危ない!!

 双葉は今さっき出ていったばっかだ。走れば追いつける!


「双葉!!何処にいるんだ!!」


 クソ!なんで見つからないんだよ!


「双葉!!居たら返事しろ!!」


 もしかしたらって冷や汗が止まらないんだ。さっきから周りの悲鳴がうるさくて頭に響いて…なあ、俺は最後までお兄ちゃんらしいことをできずに死んでいくのかな?


「た、すけ…て 」

「双、葉…?おい噓だろ、どうしたんだよその傷!!なんで、」


 通り魔か。ふざけやがって………腹からの出血が酷い。俺でも分かる、“助からない”。

 咄嗟に服を脱ぎ、止血を試みたが血は止まってくれなかった。


「なん、で ここにいる、の?」

「お前を助けに来たからに決まってんだろ!!」

「そっか……」



「ありがとう、“お兄ちゃん”」


「双」




 この日、世界は終わりを迎えた。俺は死んだ


 _____はずだった。

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