4
「時平何があった?」
「結界に綻びがあったせいで、妖のようなものに襲われました。今わたしの配下の者が追っております。」
「そうか。私が気づかない綻びが・・・・。再度他のところにも綻びがないか私も見て回ろう。」
「よろしくお願いいたします。私も後ほど。」
晴明と軽く話した後、くるりと春宮様の方を見る。
ポカンとした表情でこちらを見ている。突然の事で驚いたのだろうなと安易に想像はできるので、側によりしゃがみこみ視線を合わせる。
「春宮さま、咄嗟に引っ張ってしまい本当に申し訳ございません。お怪我はございませんか?」
「・・・・・・あ!あぁ、すまない。怪我はない。」
「立てますか?」
「もちろん。」
「後で、怪我の確認をされてくださいね。」
手を差し出し、春宮さまを引っ張り立たせる。
「春宮さま、ひとまず殿舎に戻られますか?」
「いや、時平はどこに行きたい?晴明と話していただろう??」
「あー、まぁ、後で大丈夫です。他にご用がなければ殿舎に戻りましょう。」
「わかった。」
ひとまず梨壺へ戻る事にしたのだが、梨壺を直前にした渡殿で私は固まった。
ある程度は覚悟をしていた。
戻った私の力でずっと感知していた気配だ。
感知はしていたけれど、これはない。
ない。本当にこれはない。
思わず春宮さまの直衣をぎゅっと掴む。
直衣を私が掴んだことで、春宮さまは足を止め振り返った
「どうした?」
「これは、ダメ、ダメです。むしろ春宮さまが今まで無事だったのが不思議です。」
「は?しかしここは私の殿舎で、軽い体調不良が続いているだけだぞ?」
「そうだと思います。だから待っていてください。」
渡殿から下へ降りると印を結びながら梨壺を時計回りに囲っていく。簡易の結界を張るためだ。
知識は三兄弟の中でお兄様と同等の知識を持っている。
それ以外にも女の子だからと色々と幼い頃より教育を受けた。
印を結んでいるとき、朱桜が声をかけ得てきてくれたので、そのまま殿舎内を調べてもらい不要なものを取り除いてもらう。
朱桜が持ってきたのは至る所に仕掛けられていた“呪”のお札など。
これは私にも影響が出る量だ。
朱桜が徹底的に取り除いてくれたモノを朱桜に燃やしてもらう。
私の返答に術の反動が来ないようにさらに結界をはり、朱桜の炎で燃やしてもらい、私は渡殿に残していた春宮さまの元へ戻った。
相変わらずドス黒いモノはあるが先ほどよりは、かなりマシだろう。
〈朱桜ありがとう。側で控えてて。〉
〈あぁ。〉
「春宮さま行きましようか。」
「何をした?」
「詳しくは秘密ですが、簡単に言えば不要なもの、春宮さまの体調を悪くしている原因を取り除きました。」
にっこり笑みを浮かべ、春宮さまより先に梨壺の入り口に立ち、柏手を打ちさらに空気を清らかにした。
柏手を打ったが、梨壺の内部にはまだ負の気配は残っていた。
なので物理的に空気の入れ替えをするために、格子をあけ風通しをよくする。
円座に2人で腰を下ろしたところで先ほど何があったのかを説明をした。
「つまりこの殿舎に私の体調を崩すものなどがあり、それを無くしたということ、と太刀で弾き返したのは妖のようなものを切ったということか?」
「切ったかどうかはわかりませんが、退けました。術は、術者に全て返しているので2度とそんな事をしようとと考える気力は無くなるはずです。」
春宮さまは眉間に皺を寄せて何か考えているようだった。
余程力が強くない限り、全てを見抜くのは無理だろう。
だが、晴明様でも見落としたものを私が拾い上げたということで、間違いはないと思う。
後は、内裏ないの結界の張り直しをした方が良いと思う。
〈青にぃ、雪華。現段階で内裏内に結界の綻びがある箇所はいくつある?〉
〈大小合わせればゆうに50は超えるじゃろう。それも心配のない範囲のものばかりで見過ごされるような結界の綻びじゃ。〉
〈重ねがけをした方がいいだろうな。皐月の一度霊力と神力を空っぽにした方が、回復も容量も増えるから、どっかで舞えれば良いと思うが。〉
〈空っぽになったら容量が増えるんだね。〉
〈まぁ、二、三日は確実に眠り続けるだろうが。〉
そしたら、舞える場所が必要。
大内裏の中心にあるのってなんだっけ。
「春宮さま、春宮さまの周りで起きている事、体調が悪くなるのは大内裏ですか?それとも内裏内ですか?」
「大内裏の中だ。」
「では、大内裏の中心は?」
「承香殿だな。ここに戻る途中通っただろう?」
と言われれ脳内で地図を広げる。
あぁ、あそこか。
〈朱桜。承香殿を異変がないか調べてきてくれる?〉
〈わかった。〉
琥珀はまだ戻ってきていない。深追いをしていなければいいのだけれど・・・・。
うちのJr.2人はフットワークが軽くて助かる。
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