第7話・堕天使百合夢魔がミセリア・ステラを夢で堕とす

 とある、食堂で逃げようとしている子狸 ライティの足にしがみついた八目 アイが、わめいていた。

「銀の片割れリンゴは、今回は奪えなかったけれど……お願いです、あたしをハーレムの一員に加えてください!」

「離せ、やっぱり単眼種族はムリだ。オレの許容範囲外だ、尖耳エルフとか背中に翼が生えたエンジェル種族ならハーレムに加えてもいいが、実際に単眼種族の一つ目を見ると……萎える」

「そんなコトを言わないでください……そうだ、あたしの友だちに顔面目だらけの多眼種族の女の子がいますから、彼女と一緒なら」

「なおさら、断る」


 ライティが、足にしがみついたアイを、ズルズルと引きずりながら食堂の中を歩いていると声を掛けてきた女性がいた。

「ずいぶんと、お困りのようね……あたしが、その銀の片割れリンゴとやらを、奪ってきてやろうか」

 妖艶な雰囲気を放ち、背中に黒いコウモリの翼、尾てい骨から悪魔の尻尾が生えている女性だった。


 ライティが言った。

「堕天使夢魔の『夢霧 サエ』か……オレのハーレム管理はどうした?」

 サエはライティが、作った女性奴隷ハーレムの全管理を任されている。


「今は眠らせてある……なんか、面白そうな話しじゃない、銀の片割れ百合リンゴ」

 サエは本来は……百合系の夢魔だった。


 舌なめずりをしながら、サエが言った。

「あたしにも、参加させてよ……銀の片割れリンゴの争奪戦に」

「できるのか?」

「夢を使えば」

「やっみろ、成功報酬はなんだ」

「別に……特に希望はない」

 そう言って、サエは夢魔の尻尾を揺らした。


  ◇◇◇◇◇◇


 星空の下──野宿をしている、魔姫が眠そうなミセリアに訊ねる。

「最近、夜になるとすぐに眠たいような顔になるね……何かあったの?」

 ニュウがタチ役になって、ネコ役になったライムとゲロを百合で責めて弄んでいた。

「あッ……あふッ、ニュウお姉さまぁ」

「んんッ……乳牛魔王さまぁ……ダ、ダメですそれ以上奥は」

 ゲロはニュウからゾンビ乳を触られて悶え、スライム水着のライムはニュウにキスをしながら、ニュウの残った片方の手で体を撫で回されていた。


 時にはニュウの指先は、ライムが装着しているスライムのマイクロビキニ水着の千切れそうなヒモから内側へと侵入して、ライムを悶えさせる。


 そんな百合行為を眺めながら、ミセリアが言った。

「夢の中で誰かに囁かれているような……体を触られているような変な夢を、連続で見て…

…睡眠不足に」

 魔姫は木製カップに入った飲み物を飲みながら。

「ふ~ん、誰かに囁かれているような夢をねぇ」

 そう呟いて、眠りに堕ちたミセリア・ステラの寝顔を眺めた。


  ◇◇◇◇◇◇


 ミセリアの夢の中──ミセリア・ステラは、夢の中で誰かに抱きしめられてキスをされていた。

「んんんッ……だ、誰?」

 ミセリアから唇を離した人物が、夢の中で目を閉じているミセリアの耳元で囁く。

「……して、ちょうだい銀の片割れリンゴを」

 薄っすらと目を開けたミセリアの目に、微笑む夢霧 サエの顔があった。

 夢の中でミセリアの腰をグイッと引き寄せて、サエが言った。

「銀の片割れ百合リンゴは誰が持っているの? そのリンゴを次の目的地の丘で待っている……あたしの所に……」


 サエが最後まで言い終わる前に、ミセリア夢の中に毒星 魔姫が現れた。

 夢の中の魔姫は、酷くガラが悪かった。

「てめぇ、あたしが百合を仕込み中のミセリアの夢に中に勝手に入り込んで……何やってけつかる、上等じゃねぇか!」

 魔姫の手に、ライムが使う聖木の大木槌が、夢の地面から現れる。

「魔呪師をナメるな! 夢魔の分際で!」

「ひぃぃぃ!」

 サエがミセリアの夢から逃げ出す前に、イバラのつるがサエを捕らえて。

 魔姫が持った木槌がサエを襲う。

「あらあらあらあら……歯を食いしばれ、二度とミセリアの夢に侵入できないように結界を張ってやる! 下等な夢魔がぁぁ!」

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!」

 夢霧 サエは、黒煙になって消滅した。


  ◆◆◆◆◆◆


 次の日の朝──ミセリアは、魔姫からキスされて目覚めた。

「?……んんぁん」

「おはよう、ミセリア……良く眠れた? 朝食を食べたら出発するよ」


 紫色の朝焼けに染まる空が、魔姫たちの銀の片割れ百合リンゴ探しの旅を、今日も祝福してくれているようだった。

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