第6話・子供首領の女奴隷ハーレム化計画
とある、町の食堂で盗賊の子供首領──『
ライティが言った。
「わかったから……銀の片割れリンゴを奪ってきてくれたら、望みを聞いて考えてやるから」
口元だけが覗くフードから、女性の声が聞こえた。
「本当ですか、約束ですよ」
「リンゴを奪ってくるコトができたらな」
ライティは、テーブルに残る剣傷を撫でながら、食堂内を客の注文を取って回っている娘を呼び止めて言った。
「黒
呼び止められた娘は笑顔で、子供首領の頭を撫でて言った。
「ボク、お酒は大人になってからね……お肉も噛み切れる柔らかいお肉にしましょうね……ミルク持ってくるから、それを飲んで、おねんねしましょうねぇ」
立ち上がった子供首領が怒鳴る。
「バカにしているのか! 見た目は子供、中身はハーレム好きな変態青年だ! ちょっとこっちに来い! オレの凶器を見せてやる!」
ライティは、娘を店の奥へと手を引いて連れて行った。
しばらくして、ライティと一緒に戻ってきた娘の態度は変化していた。
「ご主人さま……あたしを、ご主人さまのハーレムに加えてください……食堂も辞めますから」
ライティが、変態の笑みを浮かべる。
「よしよし、しっかり奉仕をしろよ」
娘が店の奥に消えると、ライティはタメ息を漏らした。
「オレの、この凶器チート能力……なぜか、魔姫たちには効果がないんだよな……ゾンビメイドや、人造人間や、女魔王にも……あの女騎士にも、どうして効かない? 魂が違うのか?」
フードをかぶった人物が何かを言おうとする前に、それを遮るような仕草でライティは、隣のテーブルの皿から失敬した
◆◆◆◆◆◆
銀のリンゴの片割れを探す旅を続ける、魔姫たち一行は……宿屋や野宿をするたびに、百合行為で親交を深めた。
「んんッ……んぁぁ、ミセリアお姉さま……はぅぅ」
「うげッ……うげッ」
魔姫に命じられてミセリアはゾンビのゲロと、宿屋の部屋で生者と死者の実験と称するキスを命じられていた。
二人がキスをしている場面を見ながら、魔姫はなにやら紙を
「ふむっ、キスをしてもゲロの口臭はフローラルな香りが持続すると……今度は舌を絡めてみて」
ゲロの濃紫色に変色したゾンビ舌と、ミセリアのピンク色の舌が絡まる。
ミセリアは、吐き気をもよおすようなキスに、体を小刻みに震わせた。
「データは取れたから、もう離れていいよ」
ゲロから離れたミセリアは、床に四つ這いになってリバースする。
「うげぇぇぇ!」
腐火 ゲロが困り顔で言った。
「ミセリアお姉さま、 ゲロの口臭そんなに酷かったですか?」
「命令されてゾンビとキスさせられたのよ! 気持ち悪くなるのが当然でしょう!」
その時──街に買い物に行っていたニュウとライムが戻ってきて、魔姫に一枚の紙を見せた。
「魔姫さん、街中にこんな紙が、貼られていましたよ」
見るとそれは、指名手配の紙で魔姫たち五人の似顔絵と、片割れ銀リンゴの絵が書かれていた。
「えーと、なになに……『この五名を生け捕りにして、銀の片割れリンゴを持ってきた者に賞金をくれてやる……子狸 ライティ』ライティって誰? あぁ、思い出した。あの盗賊の子供首領か」
ニュウが背中に担いでいた、大剣をテーブルの上に置いて言った。
「どちらにしても、用心した方がいいな……この先の旅は、賞金を狙った連中が襲ってくると考えるのが妥当だろう……ミセリア・ステラ頼むぞ、期待している」
そう言うと、ニュウはミセリアの胸を意味なく揉んで、ミセリアは悲鳴をあげた。
「ひッ、なんであたしだけ……こんな目に」
◆◆◆◆◆◆
一晩中、百合行為をしていた魔姫たちが宿から出て街の外れまで行くと、賞金目当ての街の男女が、生活用品を武器に魔姫たちの前に立ちはだかった。
震える手で包丁を構えた女が言った。
「お、大人しく銀の片割れリンゴを渡せ!」
フォーク状の農具を持った男が言った。
「銀のリンゴさえ、こちらに渡してくれれば乱暴は……し、しない」
女魔王の乳牛 ニュウが、笑みを浮かべながら大剣を鞘から引き抜き。
ゾンビメイドの腐火 ゲロが、両腕に短剣が付いた腕当てを装着する。
水棲人造人間の水萌 ライムは、地面から生えてきた柄をつかんで、聖木の大
魔姫側が戦闘態勢を整える。
ミセリア・ステラは、魔姫の命令で守るために、魔姫を抱き締めている。
魔姫を抱き締めて、魔姫から胸を触られているミセリアが呟く声が聞こえた。
「これ、意味ある? 魔呪の姫を抱き締めて、胸触られている意味ある?」
◇◇◇◇◇◇
対峙する賞金の欲に染まった街人と魔姫たち。
その時──金属を引きずるような音が聞こえて、フードをかぶった丈が長い服の人物が、重金属の棍棒を引きずりながら現れた。
街人と魔姫たちの間に立ったフードで、顔を隠した人物が言った。
「毒星 魔姫は、あたしの獲物だ……素人は手を引いてもらおう」
素人呼ばわりされて、いきり立つ街人。
「誰が素人だ!」
「こう見えても、あたしたちは今までに何人も、お尋ね者を血の海に沈めてきたのよ」
フードで顔の上部を隠した人物が、棍棒を頭上にかざす。
棍棒の表面に無数の目が現れて、街人たちに向かって怪光線を放った。
棍棒の光りを浴びた街人たちの体が石化する。
フードをかぶった人物が棍棒を一振すると、石化した街人たちは粉々に砕けて粉塵になって消えた。
フードをかぶった人物が言った。
「大丈夫……時間が経過すれば粒子が結合して元の姿にもどるから……たぶん。さてと、次は」
魔姫たちの方に向き直ったフード人物が、かぶっていたフードを外して顔を見せる。
フードの下から
「銀の片割れリンゴ持っていたら、ちょうだい♬ あたしの夢を叶えるために必要だから」
単眼少女──
それを見てミセリアが叫ぶ。
「どうして、衣服も巨大化するんだ⁉」
ミセリアの言葉を無視して、アイが一撃粉塵の棍棒を振り下ろす。
ニュウの大剣が、振り下ろされた棍棒を受け止めた。
素敵な笑みを浮かべてニュウが言った。
「なかなかの、棍棒さばき……わたしでなかったら、粉塵になってここにいる全員が消し飛んでいたな……もちろん、おまえの体も」
アイが元の等身サイズに戻って言った。
「そこまで、見切っていたの……確かにあたしが棍棒を全力で振り下ろしていたら、あたしの体も含めて。この地域一体がクレーターになって消えていた」
フードをかぶり直して、アイが言った。
「初めて見切られた……今回は、あたしの負けを認める……でも、必ず銀の片割れリンゴは奪うから」
そう言い残して、アイは棍棒を担いで去って行った。
大剣を収めてニュウが言った。
「とりあえず、刺客の最初の攻撃は退けたか……次はミセリアが頼む……百合騎士のワザで」
ミセリアは、うんざりした表情で首をブンブンと横に振った。
百合騎士と魔呪姫の逃亡旅は、まだまだ受難が続きそうであった。
ここで、突然、小説の画面枠に横から現れた第四の壁超え女神ロヴンが、読者に向かって言った。
「タイトルの中にある〝逃亡旅〟は忘れてください……何から逃げているとか、突っ込みしないように……もしかしたら、この先何かから逃げる場面が出てくるかもしれませんから、それが〝逃亡旅〟です」
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