第5話・女魔王の銀のリンゴと……女集めて奴隷調教してハーレム社会を目論むクズ野郎!

 先頭で四つ這いになって、匂いを嗅ぎながら平原を進む腐火くされびゲロの後について、魔姫たちは銀リンゴがある地を目指して進んだ。

 メイド服のスカートがめくれて、パンツ丸見えになっているゲロが言った。

「風の匂いに混じって、あの山の向こう側から銀のリンゴの匂いが漂ってきますね……どうしますか? 魔姫さま、このまま進みますか?」

「平原の男の臭いは?」

「山の麓に大量にいます……例の盗賊連中の野郎臭ですね」

「前進あるのみ! 野郎を蹴散らせ!」


 ライムが、耳を澄ませる。

「盗賊が会話している声が聞こえます……『もうすぐ、ここに来る毒星 魔姫の姫さまをとっ捕まえて、仲間も一緒にハーレムに加えて奴隷調教してやる』……と、ひぇぇぇ、とんでもない話しを」


 魔姫がミセリア・ステラに言った。

「ミセリア、盗賊たちの様子見えるかな?」

「何を言って……こんな場所から見えるはずが……あッ、見えた」

 目を凝らしたミセリアが、山の麓を凝視する。

「盗賊の数は、一人……二人……全員で三十三人、その中には可愛らしい男の子も混じっている」

「ふ~ん、どこかの村から拐ってきた、慰み者の男の子か……こりゃあ、先に女魔王に連絡して、盗賊野郎たちを退治してもらった方がいいね」


 そう言うと魔姫は、折り紙の鶴を数百匹取り出して、空に放った。

 折り鶴は、そのまま式神になって女魔王の住む、山の裏へ飛んでいった。

 魔姫が飛んでいく折り鶴の群れを見ながら言った。

「親友の女魔王が、変態盗賊を退治するには明日の朝くらいは掛かるから、今夜はこの場所でキャンプしよう……ゲロ、焚き木を集めてきて火を起こして……ライムは地面を掘って水脈から水を確保、ミセリアは……食材集めてきて、あたしは寝る……今夜は肉の串焼きパーティーだぁ」

 

  ◆◆◆◆◆◆


 翌日──魔姫たちが盗賊の砦に到着した時には、女魔王の手で砦は破壊されていて。

 盗賊たちは、虫の息で倒れて唸っていた。


 頭に左右非対称に除角された、牛のような角を生やした女魔王が、魔姫を見て言った。

「連絡を受けて昨夜、半殺しで退治しておいた……当分、悪さはできないだろう」

 幅広の大剣の背中で、肩をトントンと叩いている女魔王は、近くに座り込んでいる、可愛らしい少年の首根っこをつかんで乱暴に立たせる。

「ほら、立て……見た目が可愛らしいから、どこからか拐われてきた子供かと思って、危うくダマされるところだった……魔姫、コイツがこの盗賊団の首領だ」

 女魔王に話しかけられた魔姫よりも、ミセリア・ステラの方が少年を見て驚く。


「その子が盗賊団の首領……まだ、小学高学年か中学一年生くらいじゃないか」

 左右非対称に牛角の先端を切断されている、女魔王がミセリアに言った。

「だから、見た目にダマされるなと言っただろう……コイツ、自分に不老の術をかけてやがる……見た目は子供、頭脳はそれなりの年齢のハーレム好きな犯罪青年だ」

 首根っこをつかまれた、子供首領が毒づく。

「けッ、たいがいの女はこの見た目に油断して術薬飲ませて奴隷調教できるのにな……女魔王はダマせなかった」


 女魔王が牛のように長くて、牛タン色をした舌で子供首領の顔をナメる。

「残念だったな、わたしは味覚が発達しているのでな……おまえをナメた時の味は子供の味じゃなかった」

 そう言うと、女魔王【乳牛ちちうし ニュウ】は、子供首領の首筋を手刀で強打して意識を失わせた。


 そして、地面に倒れた子供首領のズボンを脱がして、局部を露出させて言った。

「見ろ、この局部を子供のサイズじゃない……凶器だ、これで女たちをハーレムに加えて泣かせてきた外道男だ」


 ニュウは、頭の左右非対称の長さの角を触りながら言った。

「この角の長さ変だろう、我が種族はある年齢になると頭の角を除角する風習がある……その時に暴れて切られたから、長さが非対称になった……角には神経や血管が通っていたから、血が出て痛かったぞ」


 ニュウに魔姫が訊ねる。

「『銀の百合リンゴ』はどこ?」

「持ってきた」

 そう言うと、ニュウは麻袋の中から銀色に輝く、半分の金属リンゴを取り出して言った。

「片割れの【銀の百合リンゴ】……もう一つの片方のリンゴが揃わないと、百合効果は半減する」


 ニュウの説明だと、銀の百合リンゴは半身づつ存在していて、二つが一つになると……国中の女性を百合化させて【百合の王国】が誕生するらしい。

「百合のための、百合世界の、百合の王国……もちろん、その国の頂点に立つのは……ここにいる五人」


 ニュウの言葉を聞いた、ミセリアが声を荒げる。

「ちょっと待って! ここにいる五人って……あたしも入っているの? 聞いてないよぅ」

「これは予言の決定事項だ、我々五人は百合の国を作るために、運命に導かれて集まった……たぶん」


 ミセリアが女魔王の言葉に反発する。

「そんなの知るか! あたしは自由行動を……」

 魔姫が片手の平を、ミセリアの前に差し出して言った。

「ミセリア、お手っ」

 条件反射でミセリア・ステラが、犬のようにハァハァ言いながら、しゃがんで魔姫の手に片手を乗せる。

「きゅうぅぅん……体が逆らえない、悔しい」

「ミセリアも一緒に百合レズの国を作るの……そのために、ハーレムはぶっ壊す」


 こうして、五人の百合戦士が集まると、女魔王は盗賊たちから金品を奪って回っている。

 エンジ色のジャージ女に向かって言った。

「『ロヴン』ちょっとこっちに来て……この仲間で、銀のリンゴの半身を探すコトに決まったから……あんたも、ちょくちょく同行して」


 盗賊から奪った宝石を身に付けた女神ロヴンが、女魔王・乳牛 ニュウの近くに行くと、ニュウがロヴンを紹介する。

「この子は『第四の壁越え女神ロヴン』……時々、壁や何も無い空間に向かって呟いている変わり者だけれど、なにやら不思議な力を持っているらしくて、時々現れては役に立つ……百合からは外れるけれど、雑用係に使えるから連れて行く」


 女魔王に紹介されたロヴンが指を鳴らすと背後の世界がモノクロに変わり停止する。

 ロヴンが、読者の方を向いて言った。

「はじめまして、作品の壁を越えて読者に語りかけたり、作者と交渉したりできる特殊キャラのロヴンです……ちょくちょく、色々な作品にお邪魔しています……あたしに急に話しかけられても驚かないでくださいね」

 ロヴンが、人差し指を立て言った。


「残念ながら、この作品は作者の創作メンタルが不安定なので一時中断します……この先のネタやエピソードも霧の中なので、また作者の執筆意欲が向いたら再開しますから」

 そう言うと、とりあえず作品完結させたロヴンが指を鳴らすと世界が動き出して、魔姫やニュウが動き出した。

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