第4話・旅の仲間3号登場……なんで名前が和風の名前?
王室馬車と一師団が去り、魔姫とミセリアの前に顔色がゾンビ色をしたメイドが一人残された。
両手首と両足首を罪人を拘束する、長めの鎖で繋がれ。
首に巻かれた鎖は溶接されて、二度と外せないようになっていた。
ゾンビメイドが泣きそうな声で言った。
「魔姫さま……酷いですよ、どうしてあたしを毒殺してゾンビに変えたんですか?」
「実験のため……一度、ゾンビを作ってみたかったんだよね」
「それだけのために……酷すぎます」
「まぁまぁ、防腐加工して自我を持ったゾンビにしてあげたんだから……アンデッドになれたコトに感謝しなさい、ゲロは嗅覚は特化しているんだから」
「うーっ、素直に喜べません」
「ちなみに、ゾンビ臭は日替わりの香水の香りにしてみた」
◇◇◇◇◇◇
旅の仲間、ゾンビメイドの腐火 ゲロを仲間に加えた、魔姫たちの旅は再開した。
歩きながら、ミセリアが魔姫に質問する。
「さっきから、気になっているけれど……異世界なのに、なんで名前が毒星 魔姫とか、腐火 ゲロとか和風の名前なの?」
ミセリア・ステラの質問に立ち止まった魔姫が、強めの口調で言った。
「〝考えるな! 感じるんだ!〟別に変じゃない……今、この国では
「苗字も改名できるの?」
「できるよ……あなたがいた世界の常識は、この異世界では非常識……はい、名前のナゾはこれで解決」
◇◇◇◇◇◇
やがて、一行は湖の畔にやって来た。
魔姫が言った。
「今夜はここで、キャンプする……異世界の旅は宿に泊まる以外は、毎晩がキャンプ……町で宿屋が見つからない時は、他人の家に泊めてくれるように交渉」
先人の旅人が野外泊した痕跡の場所で、近くの林で薪を集めてきたゾンビメイドのゲロに魔姫が言った。
「ゲロ、火種を起こして」
「はい、魔姫さま」
ゲロは長い鎖で繋がれた両手で器用に、腰の左右のベルトにある、二本の戦闘ナイフを引き抜くとナイフに付いている火打ち石の火花で火種を作って、薪に火を付けた。
魔姫が湖の方を眺めながら言った。
「この湖が師匠が話していた湖か……後は食材探しなんだけれど──森の宿屋で作ってもらった、お弁当はもう食べちゃったし……湖で魚でも獲りますか、湖の女神にでも頼んで」
先の旅人が残していってくれた、調理鍋に水を入れて、お湯を沸かしているミセリアが魔姫に質問する。
「湖の女神に頼んで魚を捕るって、どういう意味?」
「まあ、見ていなさいって」
そう言うと、魔姫は抱えられ大きさの石を持って湖に向かって放り投げた。
「どりぁぁぁ! 湖の女神出てこいやぁ!」
大きな水飛沫が上がり、しばらくして水面が盛り上がり──頭にタンコブを盛り上がらせた、女性が少し不機嫌な表情で水中から現れた。
湖から現れた女性の両腕には、金の石と銀の石が抱えられていた。
湖から出てきた、スライムビキニ水着の女神が魔姫に向かって言った。
「あなたが湖に放り投げたのは、この金の石ですか? それとも銀の石ですか? どっちの石ですか?」
「両方です、両方あたしが投げ込んだ石です……ください」
「あなたは、とてもウソつきな人です……あたしを作った魔道師の人が話していた、弟子の毒星 魔姫さんに間違いありません」
そう言う通り、透き通るスライムビキニ水着の女性は、上陸して金の石と銀の石を地面に置いて言った。
「来るの遅いです……いくら、水陸両用の人造人間でも、一人で湖底で待っていると話し相手は、水生生物しかいなかったです」
ミセリアは、水棲人造人間と名乗る少女を観察する。
顔には斜めの縫合線があって、体色はカッパ色で頭には皿、水棲活動に適応して指の間には水掻きが発生していた。
「もうすぐしたら、背中の真ん中に甲羅が出てきます……そうなったら、完全にカッパです……助けてください、あたしは化け物系のカッパや半魚人にはなりたくないです」
ミセリアが小声で魔姫に訊ねる。
「どうして、この湖に彼女は?」
「それは、彼女の口から直接聞いた方が……師匠からはだいたいの話しは聞いているけれど、ミセリアに自己紹介して」
「はい……あたしの名前は【
ライムの話しだと、魔姫がメイドのゲロを殺してゾンビ化させたのと同時期、魔姫の師匠が某国から亡くなった王女を甦らせて欲しいと依頼を受けていたらしい。
「あたしを甦らせる依頼を受けた、魔姫さんの師匠というのが〝引きこもり〟の陰キャラくせに、やたらと〝負けん気だけは強くて〟魔姫さんが、メイドをゾンビにするのが成功したと聞いて、ライバル心から……あたしを作ったんです」
魔姫の師匠は、ライムを人造人間として作ったのはいいが……あまりの可愛らしさに手放すのが惜しくなって、某国には「王女さまは、残念ながら生き返りませんでした」と、ウソの報告をして湖の底に棺に入れて沈めた。
「魔姫さんの、お師匠さんはあたしを魔姫さんに見せて、自慢したかったんでしょうね……だから、棺の中に石板伝言を入れて魔姫さんが来たら……仲間になって、人造人間の性能を見せびらかせるように……その後は、魔姫さんの師匠のお世話をするようにと」
魔姫の師匠の唯一の失敗は、水棲に特化した人造人間を作ってしまったために、カッパ化や半魚人化してしまうのを……魔姫に託して止めてくれるように石板に記して頼んだ。
ライムの話しを聞いた魔姫が言った。
「だいたい、師匠から聞いていた話しと同じ……まったく、引きこもりの陰キャラのクセにプライドだけは、変に高い人なんだから……人造人間をカッパや半魚人にしたくなかったら、最初から水棲人造人間なんて見栄張って作らなければいいのに……あたしの実力はすでに、師匠を越えている」
魔姫はライムを仲間にして、少しづつ陸上生活に慣れさせれば半魚人化だけは防げると伝えた。
スライムビキニ水着のライムの顔に、明るい笑みがこぼれる。
「本当ですか、あたし……おぞましい姿のカッパや半魚人にならなくて、済むんですか!」
「あたしが調合した魔法薬を一ヶ月飲んでいればね……変態師匠の所には帰らない方がいいよ、あの人はライムを閉じ込めて一生愛でるつもりだから……エッチな意味も含めて」
「わかりました、これからは魔姫さんと行動を共にします」
そう言って、仲間になったライムは、強く引っ張ったら切れてしまいそうな、スライム水着のヒモを、軽く指先で引っ張った。
そして湖に潜ったライムは、夕食の魚を獲ってきた。
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