第52話 ミオのほんまの気持ちや

扉を開けると、リビングの空気が妙に張りつめていた。

ハルキは一瞬、足を止める。

「……あれ? なんか話し込んでた?」

三人の視線が一斉にこちらを向く。

セリナはすぐに微笑み、カナメは扇子を閉じて姿勢を正した。

ミオだけは、どこか落ち着かない様子で視線を逸らしている。


「おかえりなさいませ、任谷さま」

セリナが立ち上がり、優雅に一礼した。

「少し護衛のお二人と意見を交わしておりましたの。……ですが、そろそろ席を外しましょうか。カナメさん、ご一緒いただけます?」

「ええ、構いませんわ」

カナメは軽く頷き、セリナと共にリビングを出ていった。

扉が閉まると、部屋にはハルキとミオだけが残された。

静けさが戻り、妙に心臓の音が大きく響く。


「……なあ、ミオ」

ハルキが口を開くと、ミオは少し間を置いてからこちらを見た。

「ハルくん。正直に言うね」

その声は、いつもの皮肉っぽさを抑えた真剣な響きを帯びていた。

「セリナの提案……私は悪くないと思う。あの新居なら、セキュリティは今よりずっと強固になる。外からの干渉も減るし、護衛としては安心できる環境だよ」

「……ほんまにそう思うんか?」

ハルキは眉をひそめる。

「うん。もちろん、彼女の思惑はあるだろうけど……安全面だけ見れば、確かにメリットは大きい」


ミオはそこで言葉を切り、少し頬を赤らめた。

「それに……」

「それに?」

ハルキが首をかしげると、ミオは視線を逸らしながら小声で続けた。

「……あの家なら、周りの目を気にせずに済む。だから……いつでも、イチャイチャできるよ」


「な、なに言うてんねん!」

ハルキは思わず声を裏返らせた。

顔が一気に熱くなるのを感じる。

ミオは慌てて手を振った。

「ち、違う! からかっただけ! 本気にしないで!」

けれど、その頬はほんのり赤く染まっていて、冗談だけではない気配がにじんでいた。


「……もう、ほんま勘弁してくれや」

ハルキは頭を抱えたが、心の奥では妙な温かさが広がっていた。

リビングには二人だけ。

外に出ていったセリナとカナメの気配はなく、静かな空間に残るのは、互いの鼓動の音だけだった。




------------------------------------------------------------------------------------------------


更新遅くなってすみません。。。

アイデアがぁ。。。でてこなくてぇ。。。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る