第53話 ユイとアオイに話したら大騒ぎやん
その日の午後、ハルキはユイとアオイと居住区の共有スペースで雑談していた。
配信の裏話や大学の授業の愚痴など、取り留めのない会話が続く。
二人は相変わらず息の合ったやり取りで、ハルキを笑わせてくれる。
「でさ、この前の配信、コメント欄がすごかったよね」
「“関西弁かわいい”って連投されてたし」
「いや、オレは普通にしゃべっとるだけやって!」
「はいはい、照れてる照れてる」
そんな調子で盛り上がっていたが、ふとした拍子にハルキの口からセリナの話が漏れた。
「……ああ、そういや最近、セリナさんに“新しい家に移りませんか”って勧められててな」
一瞬で双子の表情が固まった。
「……え?」
「新しい家?」
二人の声がぴたりと重なる。
「ちょ、ちょっと待って!それってどういうこと?」
「まさか、引っ越すの?私たちに何も言わずに?」
「いやいや、まだ決めてへんって! ただ、セリナさんが“安全やし設備も整ってる”って言うて……」
双子は顔を見合わせ、同時に身を乗り出した。
「それ、めっちゃ大事な話じゃん!」
「なんで今さらっと言ったの!?」
「いや、そんな大げさに言うことでも……」
ハルキが苦笑すると、二人はさらに詰め寄ってくる。
「大げさだよ! だって、住む場所が変わるってことは、生活全部が変わるんだよ?」
「そうそう! 私たちだって関わるんだから、聞き流せる話じゃない!」
ハルキは両手を上げて降参のポーズを取った。
「わ、わかったわかった! そんな怒らんでも……」
ユイは腕を組み、真剣な表情で言う。
「……私たちも、そのセリナさんと直接話したい」
アオイも頷き、少し不安げに続けた。
「うん。どんな人なのか、ちゃんと知っておきたい。ハルくんのことを考えてるのか、それとも別の思惑があるのか……」
「直接、話を……?」
ハルキは目を瞬かせた。
「そう。だって、私たち抜きで勝手に決められたら困るもん」
「ハルくんが流されやすいの、私たち知ってるからね」
「うぐっ……」
痛いところを突かれ、ハルキは言葉に詰まった。
双子は揃って身を乗り出し、真剣な眼差しを向けてくる。
「だから、次にそのセリナさんが来たときは、私たちも同席させて」
「うん、絶対に」
ハルキは観念したようにため息をついた。
「……わかった。次は一緒に話そう」
双子は顔を見合わせ、同時に笑みを浮かべた。
「よし!」
「決まり!」
その笑顔に、ハルキは苦笑しつつも、胸の奥に少し安心を覚えていた。
――次にセリナと会うとき、どんな空気になるのか。
想像するだけで、また頭が痛くなりそうだった。
コールドスリープしたら未来でVTuberデビューしてました しゃけびーむ @aya0622
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