第40話 朝からすねられてもうたんや
翌朝。
まだ街が静けさを残す時間、ハルキはカナメと一緒にリビングへ姿を現した。
二人とも少し早起きしたようで、どこか柔らかな空気をまとっている。
「おはようございますわ、任谷さん」
カナメはいつも通りの落ち着いた笑みを浮かべていた。
「お、おはよ……」
ハルキは妙にぎこちない声で返す。
そこへ、寝癖のままのミオが現れた。
彼女は二人を見て、ぴたりと足を止める。
「……ふーん。朝から一緒に出てくるんだ」
「え、いや、その……」
ハルキは慌てて手を振った。
「別にいいけどさ。なんか、私だけ置いてけぼりみたいで」
ミオは唇を尖らせ、ソファにどさりと腰を下ろした。
「ミオさん、誤解なさらないで」
カナメは涼しい顔で言う。
「私はただ、任谷さんが眠れなかったのでお話をしていただけですわ」
「ふーん。話、ねぇ」
ミオは視線を逸らし、頬を膨らませた。
「……ほんまにそれだけやから!」
ハルキは必死に弁解する。
そのとき、アキナがすっと口を開いた。
「補足します。昨夜、任谷ハルキさんとカナメさんは長時間にわたり会話を交わし、その後――」
「ちょ、ちょちょちょ! アキナ! 言わんでええ!」
ハルキが慌てて立ち上がり、アキナの前に回り込む。
「……観察してたの?」
ミオがじとっとした目を向ける。
「はい。私は生活支援ユニットとして、任谷さんの行動を常時モニタリングしています」
アキナは淡々と答えた。
「いやいやいや! そういうのは黙っといてくれへんと!」
ハルキは頭を抱えた。
ミオはしばらく黙っていたが、やがて小さく笑った。
「……まあ、いいや。ハルくんが慌ててる顔、ちょっと面白いし」
「……からかわんといてくれや」
ハルキは肩を落とす。
カナメはそんな二人を見て、くすりと笑った。
「任谷さん、こうしてすねられるのも愛されている証拠ですわよ」
「……オレの胃がもたへんわ」
ハルキはため息をつきながらも、どこか嬉しそうだった。
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