第19話 護衛たちの気持ち

夜。配信を終えて、ベッドに横になった。

天井の照明は落ち、静かな空気が広がる。

「……ふぅ。今日もようしゃべったな」

ぼんやりとつぶやいたとき、白い球体アキナがふわりと浮かび、淡々とした声を響かせた。

「任谷ハルキさん。先ほどの診療で“護衛二人の心証は問題ありません”とお伝えしましたが、補足説明を行いますか?」

「補足? なんやそれ。……まあ、聞いとくか」


アキナは間を置かずに告げた。

「カナメについて。彼女はあなたが就寝した後、しばしば寝室に入室します。理由は“護衛”と説明していますが、実際には椅子に腰かけ、あなたの寝顔を見守っています。その際、少量のアルコール飲料を嗜むことも確認されています」

「……はぁ!? オレが寝とる横で酒盛りしとんのかい!」

「はい。ただし、飲酒量はごく少量であり、警戒心が緩んでいるわけではありません。観測によれば、あなたが寝返りを打つたびに彼女の表情はわずかに緩みます。これは“安心”の表れと推測されます」

「……なんやそれ。護衛っていうより……」

ハルキは言葉を濁した。胸の奥が少し熱くなる。


アキナは続ける。

「ミオについて。彼女はあなたの声を録音し、個人用に編集した音声ファイルを作成しています。再生頻度は高く、特に“笑い声”を好んでいるようです。また、彼女の個人端末の壁紙は、あなたの寝顔を撮影した画像に設定されています」

「……おいおいおい。勝手にオレの寝顔を壁紙にすんなや……」

「違法性はありません。護衛任務の一環として撮影された映像を個人利用しているだけです」

「いや、余計にややこしいわ!」


ハルキは頭を抱えた。

だが同時に、心のどこかで妙な温かさを感じていた。

護衛としての役割を超えて、自分を大切に思ってくれている――そんな気配が、アキナの淡々とした報告の裏からにじみ出ていた。

「……二人とも、ほんまにオレのこと……」

小さくつぶやいた声は、誰にも届かない。


アキナが最後に告げる。

「結論。護衛二人の心証に問題はありません。むしろ、強い好意と保護欲求が確認されています」

「……そ、そうか」

ハルキは布団をかぶり、顔を隠した。

胸の奥が、妙にくすぐったい。

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