第14話 コメントって、こんなに届くんや
画面の中では、アオナが笑顔で話し続けていた。
「でね、朝のストレッチは浮遊ユニットの上でやると、バランス感覚も鍛えられるんだよ!」
ピナが静かに補足する。
「姉は毎朝、ユニット上で片足立ちをしています。安全性には十分注意してください」
ハルキは笑いながら、端末のコメント欄に指を伸ばした。
「……ちょっと、書いてみよか」
彼が打ち込んだのは、短い一文だった。
《朝から元気すぎて、こっちが目ぇ覚めました。ええ声ですね》
コメント欄に流れたその言葉は、最初は他の視聴者の間に紛れていた。
だが、すぐに反応が返ってくる。
《ハルキさん!?》
《本物?》
《うわ、コメントしてる!》
《声の人が来た!》
《うれしいです!》
アオナが画面越しに反応する。
「え、ちょっと待って! 今のって……ハルキさん?」
ピナが確認するように頷く。
「配信者本人のアカウントです。間違いありません」
ハルキは少し照れながら、もう一文だけ打ち込んだ。
《勉強させてもろてます。掛け合い、ほんまにすごいです》
コメントがまた流れる。
《礼儀正しい……》
《“もろてます”って言い方、好き》
《コラボしてほしい!》
《アオナちゃん、ピナさん、ぜひ!》
《配信者同士の交流、見たい!》
アオナが笑いながら言った。
「うわー、うれしい! ハルキさん、見てくれてるなんて! 掛け合い、褒められたー!」
ピナが少しだけ間を置いてから、静かに言葉を添える。
「あなたの声、ずっと聞いていたくなりました。なんでだろう……落ち着くんです」
ハルキは画面を見つめながら、少しだけ背筋を伸ばした。
「……コメントって、こんなに届くんやな」
ミオが後ろから声をかける。
「ね? 言葉って、ちゃんと返ってくるんだよ」
ハルキは端末をそっと置き、深く息を吐いた。
「ほんなら、次の配信……ちょっと気合い入れてみよか」
それは、誰かとつながるための、最初の一歩だった。
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