第12話 そろそろ“うまい人”見てみよか
ハルキは、配信後のコメントを眺めながら、ソファに深く沈み込んでいた。
「“未来の食パン”でタグできるとは思わんかったな……」
画面には、昨日の配信に寄せられたコメントが並んでいる。
《ハルキさんの言葉、毎回楽しみにしてます》
《声に癒されるって、こういうことかも》
《次は“未来の選択肢”について語ってほしい》
《ランキング上位入り、おめでとうございます!》
《毎晩聞いてます。ありがとう》
「……なんか、ほんまに人気出てきたんちゃう?」
ミオが笑いながらキッチンから顔を出す。
「うん。でも、ここからが大事だよ」
「ここから?」
「“しゃべるだけ”で届くのは最初だけ。続けるには、ちょっと工夫がいる」
ハルキは少し考え込んだ。
「……せやな。オレ、しゃべるのは好きやけど、“うまい”か言われたら微妙やし」
アキナが静かに浮かびながら補足する。
「現在、配信技術に関する学習コンテンツは複数存在します。視聴による参考も有効です」
「……ほんなら、そろそろ“うまい人”見てみよか」
ミオが嬉しそうに頷く。
「それ、待ってた。おすすめあるよ」
「誰や?」
「双子の配信者姉妹。姉は快活で、妹は冷静。テンポも掛け合いも絶妙」
ハルキは端末を受け取り、画面に映る二人のアバターを見つめた。
青とピンクのイメージカラー。姉は笑顔で元気に手を振り、妹は落ち着いた声で進行を支えている。
「……なんか、ええコンビやな。見てるだけで空気が明るなる」
カナメが静かに言葉を添える。
「彼女たちは、言葉の選び方と間の取り方が非常に巧みです。参考になるはずです」
ハルキは画面を見つめながら、少しだけ背筋を伸ばした。
「ほんなら、今日は“学びの日”やな。次の配信、ちょっと変えてみたいし」
ミオが笑う。
「ハルキくんが“変えてみたい”って言うと、ちょっとワクワクする」
「そら、ええとこは盗まな損やろ」
アキナが静かに告げる。
「双子配信者の最新配信は、今朝更新されています。再生準備、整っています」
ハルキは端末を手に取り、再生ボタンに指をかけた。
「……ほな、見せてもらおか。未来の“しゃべりの達人”ってやつを」
画面の中で、双子の配信が始まろうとしていた。
それは、誰かとつながるための、次の一歩だった。
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