第3話 初勝利の証

 森の奥を進むと、月明かりの下で異様な気配を感じた。

 現れたのは、先ほどのゴブリンとは比べものにならない大柄の個体――ゴブリンソルジャー。

 粗末ながら鉄の剣と革の盾を携え、眼光は獰猛に輝いている。


 「くっ……いきなりこんな強敵かよ」


 今の俺では勝てないかもしれない。

 だが逃げれば、再び“無能”と罵られた自分に逆戻りする気がした。


 ゴブリンソルジャーが吠え、剣を振り下ろす。

 ――その動きが、不思議と読めた。


 【敵の戦闘行動を吸収しました】

 【剣術熟練度 +3】


 「……なるほど、これが《吸収成長》!」


 身体が自然に動き、俺の剣が盾の隙を突く。

 鋭い痛みが走ったが、次の瞬間――


 【敵の耐久力を吸収しました】

 【防御力 +2】


 「これなら、耐えられる!」


 数度の斬り結びの後、俺はゴブリンソルジャーの剣を弾き飛ばした。

 すぐさま踏み込み、渾身の一撃を叩き込む。


 「――終われッ!」


 剣が深々と突き刺さり、巨体が崩れ落ちる。


 【対象の能力を吸収しました】

 【剣術熟練度 +5】

 【生命力吸収:HP全快】


 荒い息を吐きながらも、俺は立っていた。

 体の内側から湧き上がる力に、全身が震える。


 「……勝った……俺が……」


 胸の奥からこみ上げてくる感情は、恐怖ではなく確かな自信だった。

 追放された俺は無能なんかじゃない。

 むしろ、この力を使えば――


 「……最強になれる」


 初めての勝利は、俺にとって新たな始まりを告げる証となった。

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