第2話 隠された力の覚醒

夜の森は冷たく、闇に沈んでいた。

 追放された俺は、一人ぼろぼろの外套に身を包み、焚き火の小さな炎に手をかざしていた。


 「……このままじゃ死ぬだけだな」


 仲間を失い、金も装備も最低限。

 心細さと虚しさに押しつぶされそうになったその時、再びあの声が脳裏をよぎった。


 ――《吸収成長(アブソーブ)》、発動条件を確認。


 目の前に、半透明のウィンドウが浮かんでいた。

 (……これは、スキルの詳細? 俺にしか見えていないのか?)


 試しに薪を拾い、火に近づける。

 すると小さな文字が浮かび上がった。


 【炎の性質を吸収しました】

 【耐性:火 +1】


 「……っ!? 本当に、力が増えている……!」


 さらに偶然、森の奥から現れた一匹のゴブリン。

 痩せ細った体だが、武器を振りかざし襲いかかってきた。


 「こんな時に……っ!」

 俺は震える手で剣を構える。錆びた刃が月光を反射し、ゴブリンの棍棒とぶつかった。


 ――その瞬間、再びウィンドウが開く。


 【敵の攻撃パターンを吸収しました】

 【反応速度 +2】


 驚くほど身体が軽くなり、相手の動きが手に取るように分かる。

 「これが……《吸収成長》の力……!」


 ゴブリンの棍棒をかわし、俺は剣を突き立てた。

 血飛沫が舞い、相手は絶命する。


 【対象の生命力を吸収しました】

 【HP回復 +30】


 傷だらけの身体が、瞬く間に癒えていく。


 「……これなら、俺は戦える」

 胸の奥に、熱い確信が芽生える。


 無能と追放された俺は、無能なんかじゃなかった。

 本当の力は、今まさに目覚めたのだ。


 「見ていろよ……必ず証明してやる。俺が最強だってな」


 焚き火の炎が夜空を照らす中、俺は固く拳を握りしめた。

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