第4話 森で出会った少女

 初めての勝利を噛みしめながら森を歩いていると、助けを求める声が聞こえた。


 「誰か! 助けて!」


 駆けつけると、そこにはボロ布のような外套をまとった少女がいた。

 金色の髪が泥にまみれ、腕には深い傷が走っている。

 彼女を取り囲んでいるのは、牙を剥いた狼型の魔獣・フェングウルフ。


 「ちっ……数が多い!」

 俺は剣を握りしめ、少女の前に飛び出した。


 狼たちが一斉に襲いかかる。

 だが今の俺は怯まない。


 【敵の速度を吸収しました】

 【敏捷 +4】


 身体が風のように軽くなり、次々と狼の牙をかわしていく。

 剣を振るうたびに影のような残像が走り、狼たちは斬り伏せられていった。


 「す、すごい……!」

 少女は驚愕と安堵の入り混じった声を漏らす。


 最後の一匹を倒し終えると、俺は息を整え、少女に手を差し伸べた。

 「もう大丈夫だ。立てるか?」


 「……ありがとうございます」

 震える声で少女は俺の手を握った。

 その瞳は、恐怖の中にも強い意志を宿していた。


 「私はリナ。……実は、王都から逃げてきたの」


 王都から? ただ者ではないことはすぐに分かった。

 だが詳しく聞く前に、少女の腹がぐぅと鳴った。


 「……まずは食事と休息だな」

 俺は苦笑し、リナを連れて森の奥へと歩き出した。


 追放されたはずの俺に、思いがけない出会いが訪れた。

 この邂逅が、後に大きな運命を呼び寄せることになるとは、この時の俺はまだ知らなかった。

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