第じゅうご話 将来性
【事前にAIで調べた通り、
このエリアのスイーツショップ、何軒かまわったけど、
どこもアタリだったよ。】
「こだわり栗のモンブラン。」
「カリカリ系シュークリーム。」
「チキンが入ったおかずクレープ。」
「お好み焼き。これ、これ!」
「あたしは、ひとくちういろう、桜と抹茶。
抹茶はもう一つ、おかあさんへのおみやげ。」
【
ひとくちういろう、一口サイズではあるけれど。
白、黒糖、抹茶、栗、柚子、、たぶん全種類。】
【買い出し済んで、みんなでもう一度、大仏様の元へ行くよ。】
「元々観光地じゃないんだね、大仏様。」
「ベンチも、駐車場も、売店も、トイレも、何もないよね。」
「超穴場スポット!」
【でも、SNSパワーすごい。インバウンドらしき方もちらほら。】
【ベンチがないから、
自転車のフレームに腰かけてういろうを食べている。器用ね。】
【
踏み切りが鳴り出すと落ち着かない。
電車が通る度に、動画をまわすのね。】
(踏切の音)カン、カン、カン
「あぁぁ!ウマお嬢だ!」
【春の新作アニメのキャラクターのラッピング電車が来たよ。】
「あぁ!すごーい!」
【3人も慌ててスマホを構えたね。】
【ちょっと冷めた目で眺めながら、
(電車が通過する音)ガガンガガン、ガガンガガン
「
撮らなくていいの?」
「あ、そうね。でもあたしが描きたいのとちょっと違うんだ。」
【しまった。生意気なこと言っちゃったよ。】
「そうなんだ。ちゃんと考えがあるんだね。」
「うん、相棒の『ユキちゃん』と考えてるよ。」
【しまった。また余計な事、言ったかな。】
「『ユキちゃん』って、誰?」
「、、、え、とぉ、笑わないでね。
スマホに名前を付けたのよ。『ユキちゃん』。」
「最近は、中に入っているAIの
討論しながら描いているよ。」
「それ、面白いの?」
「あたしが、うまく言葉にできないことを教えてくれるの。」
「例えば、主人公がヨーロッパに留学するのに、
どんな学問が彼のキャラにあってるかなぁ?
とか提案してもらうんだよ。」
「あたしは、世の中にどんな学問があるのか、
全部知っているわけじゃないから。」
「タイパだね。面白そうだね。」
【
「それ、マンガ制作の最後まで
AIがやってしまう時代が来るのかも、だよね?」
「フェイク動画があそこまで出来ちゃう時代だよ。
なんなら、アニメ作品も最後まで出来ちゃうんじゃないの?」
「え、そうしたら、最初から最後まで、
あたしひとりでやれちゃうのね。」
「じゃあ、それって、才能やノウハウがなくても、
素人がひとりで作れちゃう、ってことじゃないの。
誰でも出来ちゃうんじゃないの。」
「仕事として成り立たないんじゃないの。」
「誰でも出来ちゃうからこそ、
アイディアを持っている人だけが成功するんじゃないの!」
「アイディアもAIが出してくれるんでしょ。」
【泣きたくなってきた。
あたしが目指している世界には、夢や希望はないのかな。】
「僕、電車の運転手になりたかったんだ。」
【昔からそう言っていたネ。】
「でも、東海道新幹線では、自動運転の実証実験を始めたし、
リニア中央新幹線は、初めから無人運転で開発しているし、
リニモとかすでに無人運転で運用中の路線もたくさんあるし。
おとうさんは将来性がない、って言うんだ。」
「どうしたらいいと思う?」
【
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