第じゅうご話 将来性

莉奈りな

【事前にAIで調べた通り、

このエリアのスイーツショップ、何軒かまわったけど、

どこもアタリだったよ。】


かすみ

「こだわり栗のモンブラン。」


萌音もね

「カリカリ系シュークリーム。」


孝太郎こうたろう

「チキンが入ったおかずクレープ。」


雷人らいと

「お好み焼き。これ、これ!」


莉奈りな

「あたしは、ひとくちういろう、桜と抹茶。

抹茶はもう一つ、おかあさんへのおみやげ。」


莉奈りな

武佐士むさしくんは、

ひとくちういろう、一口サイズではあるけれど。

白、黒糖、抹茶、栗、柚子、、たぶん全種類。】

【買い出し済んで、みんなでもう一度、大仏様の元へ行くよ。】





孝太郎こうたろう

「元々観光地じゃないんだね、大仏様。」


雷人らいと

「ベンチも、駐車場も、売店も、トイレも、何もないよね。」


かすみ

「超穴場スポット!」


莉奈りな

【でも、SNSパワーすごい。インバウンドらしき方もちらほら。】

【ベンチがないから、武佐士むさしくんは、

自転車のフレームに腰かけてういろうを食べている。器用ね。】

孝太郎こうたろうくんは、食べながらも、

踏み切りが鳴り出すと落ち着かない。

電車が通る度に、動画をまわすのね。】


(踏切の音)カン、カン、カン


孝太郎こうたろう

「あぁぁ!ウマお嬢だ!」


莉奈りな

【春の新作アニメのキャラクターのラッピング電車が来たよ。】


かすみ萌音もね雷人らいと

「あぁ!すごーい!」


莉奈りな

【3人も慌ててスマホを構えたね。】

【ちょっと冷めた目で眺めながら、

武佐士むさしくんは、ういろうをかじっているのか。】


(電車が通過する音)ガガンガガン、ガガンガガン


武佐士むさし

莉奈りなちゃん、ってさあ、マンガ家になりたいんでしょ。

撮らなくていいの?」


莉奈りな

「あ、そうね。でもあたしが描きたいのとちょっと違うんだ。」

【しまった。生意気なこと言っちゃったよ。】


武佐士むさし

「そうなんだ。ちゃんと考えがあるんだね。」


莉奈りな

「うん、相棒の『ユキちゃん』と考えてるよ。」

【しまった。また余計な事、言ったかな。】


武佐士むさし

「『ユキちゃん』って、誰?」


莉奈りな

「、、、え、とぉ、笑わないでね。

スマホに名前を付けたのよ。『ユキちゃん』。」

「最近は、中に入っているAIのGARMINIガミちゃんと

討論しながら描いているよ。」


武佐士むさし

「それ、面白いの?」


莉奈りな

「あたしが、うまく言葉にできないことを教えてくれるの。」

「例えば、主人公がヨーロッパに留学するのに、

どんな学問が彼のキャラにあってるかなぁ?

とか提案してもらうんだよ。」

「あたしは、世の中にどんな学問があるのか、

全部知っているわけじゃないから。」


武佐士むさし

「タイパだね。面白そうだね。」


莉奈りな

武佐士むさしくんは納得してくれたのかな。】


孝太郎こうたろう

「それ、マンガ制作の最後まで

AIがやってしまう時代が来るのかも、だよね?」

「フェイク動画があそこまで出来ちゃう時代だよ。

なんなら、アニメ作品も最後まで出来ちゃうんじゃないの?」


莉奈りな

「え、そうしたら、最初から最後まで、

あたしひとりでやれちゃうのね。」


孝太郎こうたろう

「じゃあ、それって、才能やノウハウがなくても、

素人がひとりで作れちゃう、ってことじゃないの。

誰でも出来ちゃうんじゃないの。」

「仕事として成り立たないんじゃないの。」


莉奈りな

「誰でも出来ちゃうからこそ、

アイディアを持っている人だけが成功するんじゃないの!」


孝太郎こうたろう

「アイディアもAIが出してくれるんでしょ。」


莉奈りな

【泣きたくなってきた。

あたしが目指している世界には、夢や希望はないのかな。】


孝太郎こうたろう

「僕、電車の運転手になりたかったんだ。」


莉奈りな

【昔からそう言っていたネ。】


孝太郎こうたろう

「でも、東海道新幹線では、自動運転の実証実験を始めたし、

リニア中央新幹線は、初めから無人運転で開発しているし、

リニモとかすでに無人運転で運用中の路線もたくさんあるし。

おとうさんは将来性がない、って言うんだ。」

「どうしたらいいと思う?」


莉奈りな

孝太郎こうたろうも泣きそうじゃん。】

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