第21話「深淵の入口」 draft ver.
蒼と紗夜は、図書館の地下奥――普段は決して足を踏み入れられない禁書の扉の前に立っていた。
空気は凍りついたように冷たく、まるで時の流れそのものが止まっているかのようだった。
「……ここが、“記憶の深淵”への入口」
紗夜の声は震えていた。強気な彼女でさえ、この場所に宿る気配には抗えないらしい。
扉に手を伸ばした瞬間、蒼の耳に声が響く。
――お兄ちゃん。
振り返っても誰もいない。だが、その声は確かに蒼の心を貫いた。
「玲奈……!」
胸の奥から妹の名が漏れる。
扉が軋む音を立て、ゆっくりと開いていく。
中には無数の光の粒――人々の記憶の欠片が漂い、漂うたびに誰かの笑い声や泣き声がこだました。
だが、その光の海の中には、黒い影が蠢いていた。
記憶を喰らうもの。
ここが彼らの本拠であり、蒼と紗夜が踏み込むべき戦場だった。
「蒼、迷うなよ」
紗夜が鋭く告げる。
「ここで足を止めたら、お前も“囚われた記憶”になる」
蒼は深く息を吸い込み、光と影が交錯する深淵へ一歩を踏み出した。
「次回――囚われた記憶が明らかに!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます