第22話「記憶の牢獄」 draft ver.

深淵の中は、まるで夜空を裏返したような空間だった。

 無数の光の欠片が浮かび、淡く瞬いては人の声を漏らす。

 笑い声、泣き声、怒り、祈り……。それらは誰かの記憶の断片だった。


「……ここに、取り込まれた人たちの記憶が閉じ込められている」

 紗夜の言葉に、蒼は息を呑む。


 やがて二人の前に現れたのは、巨大な檻のような結界だった。

 そこに閉じ込められていたのは――一人の男の記憶。

 依頼人の父の姿が、虚ろな目で同じ言葉を繰り返していた。


「……すまない……守れなかった……」


 蒼は拳を握りしめる。

 だが、その傍らに、見覚えのある光が揺れていた。

 小さな少女の笑顔。

 声にならない呼びかけ――


「玲奈……!」


 妹の記憶の欠片が、檻の奥に捕らわれていた。


 駆け寄ろうとした瞬間、影が音もなく湧き上がる。

 黒い腕が伸び、蒼を絡め取ろうとする。


「しまっ……!」


 紗夜が飛び込み、刀のように伸ばした光で影を薙ぐ。

 だが、影は笑うように囁いた。


「忘却を望む者たちがいる限り……檻は決して壊れぬ」


 その言葉に、蒼の胸は怒りと焦燥で満ちた。

 必ず玲奈を取り戻す――そう心に刻むが、影の罠はまだ序章に過ぎなかった。


「次回――影の核が姿を現す!」


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